教育研究所
№937「ゆとり教育」
「平成」もあと4か月となり,年末・年始はいくつかのテレビ局で,平成の時代を振り返る番組が放送されていた。
先日,いわゆる「ゆとり教育」を受けた「ゆとり世代」についての番組を見た。平成14年度全面実施の学習指導要領による教育を「ゆとり教育」,そして,その教育を受けた現在20歳代の人たちを「ゆとり世代」と呼んでいた。番組ではこの世代に共通する特徴と,その教育を受けた人々の現在の様子を伝え,既存の枠にとられずに自由に発想するよさがある,と結んでいた。しかし,当時の教育を揶揄するような「ゆとり教育」,「ゆとり世代」という呼び方や言葉の使い方,「当時は教育内容が削減され,算数では円周率を3として指導することになった」という誤った認識に,非常に残念な気持ちになった。
平成14年度に全面実施された学習指導要領は,完全週学校5日制の下,自ら学び自ら考える「生きる力」を培うことをねらいとしており,各学校ではゆとりの中で特色ある教育活動が展開できるように,教育課程を工夫し授業の改善に努めた。しかし,このようなことが社会に理解されず,「ゆとり」という言葉だけが一人歩きをしてしまった。今,振り返ると,学校では子供たちにどのような力を育てようとしているのか,そのためにどのような教育をしようとしているのかということを,もっともっと家庭や地域に発信すべきだったと思う。
いよいよ来年,小学校は新しい学習指導要領が全面実施される。それまでの間に,子供の教育に関わる人全員が,社会に開かれた教育課程の重要性を今一度確認し,学校ではどのような資質・能力を育成しようとしているのか,そのためにどのような教育をしようとしているのか,そして家庭や地域ではどのようなことができるのか,互いに理解を深めていかなければならない。 (A・O)
(2019年1月15日)