教育研究所
№973「中教審答申と新学習指導要領のポイントの再確認」
新学習指導要領(平成29年3月告示,令和2年4月完全実施)の改訂は,「生産年齢人口の減少,グローバル化の進展,AIや技術革新などにより社会構造や雇用環境の急激な変化を招き,予測困難な事態になっている」「急激な少子高齢化により成熟社会を迎え,持続可能な担い手として,多様性を原動力とし,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生む出していくことが期待される」「学校教育には,子どもたちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め知識の概念的理解を実現し,情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況の変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められる」などを背景として進められた。これらについて,再度確認し,完全実施に備えたい。
<中教審答申のポイント>
1:よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会が共有し,連携・協働しながら新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現。(註:資質・能力の3つの柱,社会に開かれた教育課程の3重点)
2:学習指導要領の枠組みの6つの改善。(註:何ができるようになるか,何を学ぶか,どのように学ぶか,子ども一人一人の発達をどのように支援するか,何が身に付いたか,実施するために何が必要か)
3:各学校の教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現。(註:カリキュラム・マネジメントの3側面の理解が必要)
<学習指導要領改訂のポイント>
1:教育基本法,学校教育法などを踏まえ,子供たちに求められる資質・能力の育成を目指し,「社会に開かれた教育課程」を重視し,実現する。
2:知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視する枠組みや教育内容を維持した上で,質を高め,確かな学力を育成する。
3:道徳科など道徳教育の充実や体験活動,体育・健康に関する指導を充実し,豊かな心や健やかな体を育成する。
4:育成を目指す資質・能力を明確化し,全ての教科等の目標及び内容を3つの柱「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力,人間性等」で再整理した。
5:「主体的・対話的で深い学び」の実現にむけた授業改善を進める。
6:各学校でカリキュラム・マネジメントを推進する。
7:言語能力の育成,理数教育の充実(問題解決学習の充実,統計教育の充実,探究的な学習の充実など),伝統・文化に関する教育の充実,体験活動の充実,外国語活動の充実(小学校中学年外国語活動,高学年外国語科,英語による英語科授業,高校卒業時に英語によるコミュニケーション力の確立など)などを改善し充実する。
また,児童生徒と向き合う時間及び関連する業務に専念できるようにするなど,「働き方改革」との関連を考慮する必要がある。
なお,詳細は,中央教育審議会答申(平成28年12月21日),小学校(中学校)学習指導要領(平成29年3月31日告示),同解説総則編ほか(平成29年6月)を参照されたい。 (H&M)
(2019年4月15日)