教育研究所
№975「卒業文集」
年が明けてすぐに,かつて勤務していた学校から,卒業生に向けての言葉を文集に寄せてほしいという依頼を受けた。依頼状の封筒には現在の校長先生や担任の先生の依頼文とともに,卒業を迎える子供たちの手紙も入っていた。手紙の名前を見て,「おっ,あの子だな」と遠足や社会科見学など一緒に過ごした時のことや,教室に授業を見に行った時のことを思い出した。担任の先生のご指導もあると思うが,非常にていねいな字で書かれていて成長を感じさせる。
手紙の中で子供たちは心に残っていることとして,日常の生活の中で私が何気なく話したことを書いてきている。朝会やさまざまな集会,儀式など子供の前で話すときは,事前に内容を練ってから話していた。しかし,子供と一緒に過ごすときには当然,台本なしで言葉のやり取りをすることになる。その時に何気なく話したことを子供が覚えていてくれたことをたいへんうれしく思うとともに,その一言が子供の心の中に残っているということに,改めて教育者としての責任の重さを感じた。
言葉を発した方ではもうすっかり忘れてしまっていても,その言葉を受けた子供の方ではしっかりと覚えている。昔の日本では,言葉に魂が宿っていると考えられていたと聞く。発する言葉の内容や話し方が相手の人に与える影響を常に考えることが大切であり,それを考えて話すというより,考えなくてもそのように話せるようにすることが大切だと,改めて思った。(A・O)
(2019年4月22日)