教育研究所
№981「あ~よかった!!」
昭和47年5月,小金井市のK小学校で3年2組の担任をしていた。ひょうきん者のA君がB君の半ズボンの前を見ながら,「セブン・イレブンいい気分,開いててよかった」と冷やかした。午前7時開店,午後11時閉店というコンビニエンスストアが初めて登場したころの話である。(その後,24時間営業に変化し,現在は人材不足と働き方改革で終日営業が見直しが進められているようだ。)
本題は,藤井翔著「おしい刑事」(ポプラ文庫)について,話題にしたいのである。それなら,なぜ,余分な前文を書いたのかということになる。実は,本書の表紙に,主人公の刑事が,B君同様の姿をしていたから,何十年も前のことを思い出して,つい書いてしまったのである。
ところで,TVの刑事ものを視聴していると,2つの特徴に気づき,推理しつつ楽しんでいながらも2つのこと,「部署の違う刑事が対立し,いがみ合う」「どこにもいる庶民を犯罪人にするストーリーにする」が気になり,もっと素朴に推理を楽しめるように,水戸黄門張りの勧善懲悪(悪いやつが悪いことをし,刑事(正義の味方)がそれを見事に暴き,懲らしめる)と単純化してほしいと思うことが少なくない。
本書の「おしい刑事」の主人公の押井刑事は,まじめに推理し,犯人をもう一歩のところまで追いつめる。しかし,「相棒」の杉下右京よろしく犯人をCだと推理したものの詰めが甘く,その筋道の通りに推理していくと真犯人はDということになるとE刑事が気付き,最後の所で手柄を横取りされてしまう。その上,押井刑事は,Cを犯人として冤罪を起こすところだったと糾弾されてしまう羽目になってしまうのだ。誠に,今一歩「おしい!刑事」の話で,「おしい刑事参上」「おしい刑事のテスト」「密着・おしい刑事」「おしい刑事の雪冤」「安楽椅子おしい刑事」「おしい刑事よ永遠に」の5編で,押井刑事の「おしい!」を楽しむことができた。(H&M)
(2019年5月10日)