第1回 ICTの特性や強みを生かした実践事例と活用のポイントについて
東京都板橋区上板橋第四小学校主任教諭
はじめに
GIGAスクール構想でICT環境が整備される中、1人1台端末が導入され、学校現場にはいかに慣れて授業に取り入れていくのかということが問われています。このことは多くの先生にとって悩みの種となっているのではないでしょうか。
ベテランの先生にとっては、ICTにそもそも慣れることから始めなければならず、近寄りがたい存在になっていることもあるでしょう。また一方で、若手の先生にとっては、ICTは身近にあるものになっていることでしょう。ワークシートをデジタル化し、配布する、もしくは、友達どうしの意見を共有するなど、盛んに行われていることかもしれません。
しかし、ただICTを活用すればよいわけではありません。ICTの特性や強みを理解し、さらにその授業のねらいを意識することが必要です。
そのような悩みの種に少しでもヒントになればと考え、この連載を始めることとしました。ICTの特性や強みを生かしながら、学習場面にどのように取り込んでいくのか、特定の教科等に絞るのではなく、どの教科等にも通ずる活用方法、活用のポイントを紹介していきたいと思います。
GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係から
GIGAスクール構想とは、いったい何のために進められているのでしょう。導入された時期を考えると、オンライン学習のためと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、学習指導要領で求められている資質・能力を育成するための土台として挙げられているのがGIGAスクール構想です。1人1台端末、通信ネットワーク等の学校ICT環境を整備・活用することで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実など教育の質を向上する構想のことです。この際にポイントとなるのが、教育・学習においてICT活用の特性・強みを生かすということです。
出典:GIGA StuDX 推進チームの取組 新学習指導要領とGIGAスクール構想の関係(文部科学省 令和3年5月12日)
※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFファイルを開きます。
教育・学習におけるICT活用の特性・強みとしてどのようなことが挙げられるでしょうか。
・カメラを使って、情報を集めること?
・友達の考えを簡単に共有できること?
・文書を簡単に作成したり、プレゼンを作成したりできること?
さまざまな考えが挙げられたのではないでしょうか。
出典:GIGA StuDX 推進チームの取組 新学習指導要領とGIGAスクール構想の関係(文部科学省 令和3年5月12日)
※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFファイルを開きます。
上の表は文部科学省が示している、「教育・学習におけるICT活用の特性・強み」です。「①多様で大量の情報の取扱い、容易な試行錯誤」「②時間的制約を超えた情報の蓄積、過程の可視化」「③空間的制約を超えた相互かつ瞬時の情報の共有(双方向性)」の3つの特性・強みが示されています。
ICT活用の特性・強みを見て、どのような場面を思い描くことができるでしょうか。
次号から、この3つの特性や強みを生かした活用について、実践事例を用いて紹介していきます。家庭学習におけるICT活用や情報リテラシー等、また、実際に指導する、さまざまな場面をイメージした活用等、ICT活用のポイントについても、お伝えしていきたいと思います。
【著者プロフィール】
公立小学校の講師、教諭、主任教諭を経て、令和3年度文部科学省初等中等教育局GIGA StuDX推進チームに所属し、全国のGIGAスクール構想の推進のために活動。GIGAスクール構想の理念とICT活用の在り方等を全国に発信してきた。今年度は、学校現場に戻り、6年生の担任としてICT活用の実践に取り組んでいる。