必見!! 合点!! 著作権!①
▶︎ 著作権とは?
○許諾をとらずに著作物を使うことはできるの?
〈教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 2022年9月号より〉
私たちは、人が作り出したさまざまなものに囲まれて生活しています。その中で、文章や音楽、映像など「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(第2条)が「著作物」とされます。ここでの「思想又は感情」は「考えたこと」程度、「創作的」は「その人なりの個性」程度の解釈で、難しいことを言っているものではありませんが、著作権は「表現」にかかります。形の有無を問わず、役所に登録するなどの手続きも不要です。なんとなく思いついた鼻歌、子どものお絵かきなど、何かを創作すればそれは「著作物」となり、それを作った人は「著作者」です。著作物を他の人が勝手に使わないようにできる権利が「著作権」で、その権利をもつ人が「著作権者」なのです。
小説を例に考えてみましょう。小説そのものが著作物、書いた作者が「著作者」であり「著作権者」です。作者が亡くなって家族に著作権を譲ったとすれば、その家族が著作権者です。小説の読者は、印刷(複製)された本の形でその小説を読みますね。著作物の利用は多くの場合、この「複製」というものになります。買った本の所有権は読者にありますが、中身の小説の著作権は「著作権者」にあります。「著作権」は英語では「copyright」、まさに「複製の権利」です。
他の人が作ったものを借りるときには、作り手(作ったものを使わせる権利をもつ人)に許しを得るのが社会の基本中の基本ですね。ところが、実際に著作権者に許諾をとりたいと思っても簡単ではない場合が多くあります。作り手の個人情報は、簡単にはわからない場合が多いです。また、音楽や動画など、一つの著作物に対して多くの人が権利者として関わっている場合もあります。例えば作詞者、作曲者、編曲者、演奏者、出演者、レコード会社、楽譜制作者、動画制作者などそれぞれに許諾をとる必要があり、手を出しにくいと感じてしまうでしょう。
授業の場面を想起すると、教科書の文章を、板書する、ノートに書き写す、ワークシートに転載するなどは全て、著作物を「複製」して利用していることになります。声に出して読む、楽譜をもとに歌ったり演奏したりするなども、著作物の口述や演奏という別の権利が関わります。先生も、児童も、です。いうなれば学校の授業は、著作権と切り離しては成り立たないといっても過言ではありません。
ではその都度、著作権者に許諾をとらなくてはならないのでしょうか。......到底追いつきませんね。そこで、学校の授業など教育に関しては、著作権者の許諾を得なくても自由に著作物を利用できるようになっているところが多くあります。
著作権法では、その目的として「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」(第1条)とあります。つまり、著作者の権利を守ることと、利用者の利便性とのバランスが大事なのです。ここで忘れてならないことは、授業で自由に使えるとはいえ、利用する著作物から作った人の権利がなくなっているわけではないこと。授業での利用にも、場合によっては許諾をとるなどの必要があるので要注意です。
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Q 許諾をとらずに著作物を使うことはできるの?
A 学校の授業では、一定程度、自由に著作物を使うことが認められています(第 35 条)。通常の対面授業であれば、教科書や一般書籍、新聞・雑誌などのコピーを配る、ワークシートに使う、児童が自分たちの作品に使う、それを撮影したり展示したりするなども手続きなく可能です。ただし、使えるのはあくまで著作物の一部です。学校で採用している教科書のほかは、自由に使えるものは原則として「著作物の一部」に限られます。本の全ページや楽譜の1曲全部をコピーすることはできません(オンライン授業や学習支援アプリを使った授業では別の要素もあります)。
次のような場合も著作物を自由に使えます。
○私的使用のための複製(第30条)→「家庭内」に準ずるごく少人数(「10人以下程度」と考えられます)の中だけで使う場合。複製は自分で行う。
○写り込み(第30条の2)→写真の背景などに他の著作物が写り込む場合。
○図書館などでの複製(第31条)→公共図書館などにおいて。学校図書館は対象外。
○引用(第32条)→自分の論が主で引用物が従、引用部分が区別されている、改変禁止、出所明示、利用する必然性がある、などの条件がそろっている。
○営利を目的としない上演や演奏など(第38条)→非営利、無料、無報酬(交通費など実費は可)。
○著作物ではないとされるもの(第10条ほか)→ありふれた表現、事実・データ、アイデア・着想、題名・名称など。
○著作権法の目的とならない著作物(第13条)→法律・国や地方公共団体による通知、裁判記録など。
そのほか、詳しくは次のサイトも参照してください。
○著作物が自由に使える場合(文化庁ホームページ)
※本記事中、条文番号は著作権法のものを示しています。