中学校数学:自ら気付き考え続けるための『まなびリンク』シミュレーションの活用
北海道教育大学附属釧路義務教育学校教諭
〈中学教科通信 2021年5月号 ウェブ版より〉
数学の学習において、1人1台端末を用いてシミュレーションで試行錯誤することは、生徒が主体的に考え続ける姿といえます。そこで、『まなびリンク』シミュレーションを活用した2つの例を紹介します。
左のアイコンをクリックすると「『まなびリンク』中学数学 3年」を別ウィンドウで開きます。 |
活用例1 課題の明確化の場面
授業内容
中学3年「三角形の角の二等分線と線分の比の定理」
本時の目標
三角形の角の二等分線と線分の比の定理について、 証明の方針を説明できる(思考・判断・表現)
問題提示から明確化までの流れ
① 大型ディスプレイによる問題提示
T:これは二等辺三角形で、∠BAD=∠CADです。BD:CDはどうなるかな?
S:1:1になる。
T:えっ、どうして?
S:二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を2等分するから。
② ①との比較での本時の課題を引き出すきっかけ
T:では、次のようにABとACの長さを変えていくと、BD:CDはどうなるのかな?(各自)
T:ABが10で、ACが5のときは、BD:CDはどうなるのかな?
S:2:1になっています。
T:ABが10で、ACが5だったら、いつでもBD:CD=2:1になるのかな?
S:きっとなるはず・・・。
③ 試行錯誤による気付きの対話
T:図を動かして調べよう。
S:きっと、AB:AC=BD:CDになるんじゃない?
T:この図について調べただけで、いつでもAB:AC=BD:CDになるといえそうかな?
S:この図だけで、いつでも成り立つとはいえないので、証明する必要がある。
T:では、仮定と結論をはっきりさせていこう。(ここで「課題」を共有する。)
このように活用すると、試行錯誤を容易に繰り返すことができ、そこでの考えを学級で共有することで、自らの問いとして課題を明確にすることができます。
活用例2 振り返りの場面
授業内容
中学3年「関数 y=ax² のグラフの特徴」
本時の目標
関数 y=ax² の a の値と、そのグラフの形の関係に気付く(知識・技能)
〔「関数 y=ax² のグラフについて原点を通ること」、「y 軸について対称な曲線であること」は既習〕
問題提示から明確化までの流れ
① 大型ディスプレイによる問題提示
S: y=-x² は a の値が負の数だから③だ。
S: y=x² と y=4x² のどちらか判断できない。
② 課題の明確化と個人・集団思考
S:例えば、x に1を代入すると、y=x² の y の値はで、y=4x² の y の値は4だから、①が y=4x² で、②が y=x² だ。
S: x の値がほかの値でも同じことがいえるよ。例えば、x に2を代入すると、y=x² の y の値は1で、y=4x² の y の値は16だから、やっぱり①が y=4x² で、②がy=x² になる。
③ 確認問題
T:では、はじめの問題に④のグラフを付け加えますね。(大型ディスプレイで表示)
この問題解決の過程を振り返り、「関数 y=ax² のグラフでは、a の絶対値が大きいほど、グラフの開き方が小さくなる」ことを生徒の言葉を生かしてまとめます。
④ 振り返り
T:『まなびリンク』シミュレーションで、関数 y=ax² の a の値をいろいろと変えてみて、グラフの様子を観察し、気付いたことを伝えよう。
(試行錯誤する時間を少しとる。)
T:「残像」ボタンを押して、a の値をいろいろと変えてみて、グラフの様子を観察しよう。
このように、振り返りにおいて活用すると、試行錯誤しながら、仲間と対話して学級全体で気付きを共有でき、確かな理解を図れます。