第3回 「時間的制約を超えた情報の蓄積」と「過程の可視化」①
東京都板橋区上板橋第四小学校主任教諭
はじめに
前回にお示しした教育・学習におけるICT活用の特性・強みの表を再度掲示します。
出典:GIGA StuDX 推進チームの取組 新学習指導要領とGIGAスクール構想の関係(文部科学省 令和3年5月12日)
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今回は、②の「時間的制約を超えた情報の蓄積、過程の可視化」について取り上げ、活用事例を踏まえながら紹介していきます。この②は、時間的制約を超え、児童・生徒が情報の蓄積をするという側面と、蓄積されたデータの活用、つまり、蓄積されたデータを教師がどのように活用していくのかということをおさえる必要があります。今回は、まずは児童・生徒が情報を蓄積していくことで考えられる特性や強みについて例を挙げながら紹介していきます。
②時間的制約を超えた情報の蓄積、過程の可視化
児童・生徒の成果物や学習した軌跡をどのように蓄積しているでしょうか。
今までですとファイリングしたり、ノートに貼ったりしながら子どもたちの学びの足跡を残していっていたかもしれません。しかし、どこに保存されているのか、さらには保存する場所などに困ったりする場面も少なくありませんでした。
私のクラスでは、書写の作品や図工の作品、家庭科の作品などを写真に撮り、下の画面のようにスライドにまとめ、その時にがんばったこと、見どころ等を記入させて、いつでも振り返ることができるようにしています。さらに、一人一人のスライドを二次元コード化することで、友達の作品にも手軽に触れることができるような環境を整えています。このようにすることで、ただ作品を鑑賞して終わることなく、互いの成長に触れる機会を作ることも可能です。児童・生徒が自らの学習の記録を蓄積していくことで、自己の成長を感じることができるようになると考えています。
また、体育科の学習では、動画を撮影することで自らの実技の様子を記録し、振り返ることも可能となります。例えば、走り幅跳びの授業では、フォームの確認をしたり、見本の動画との比較をし、うまくいかなかった原因を調べたりすることも可能です。今までは、友達に見てもらい、アドバイスを受けて学びを深めていました。ICT端末を活用することで、動画を見ながら、友達とともによいところや次への目標を考え、学びを深めることができるようになります。体育科だけではなく、音楽科の演奏等の様子を記録していくことも考えられます。
さらには、学習した時間や記録等を表計算ソフトを用いて記録していくことで、自らの学びの特徴を知ることができ、学び方を考えるきっかけにもなります。
つまり、記録を蓄積していくことで、自らの学びや成長を客観的に捉え、次のステップを踏み出すきっかけを作ることができるのです。
終わりに
このように、「時間的制約を超えた情報の蓄積、過程の可視化」というICTの特性や強みを生かすことで、教科等の授業のねらいにより迫ることができたり、児童・生徒の成長につながる場面を設定することができたりすると考えています。おさえるべきポイントは、以下のとおりです。
"情報を蓄積すればよい"ではなく、あくまでも情報を蓄積することはきっかけであり、蓄積することで何をしたいのかという目的を明確にもつことが重要です。ICTの特性や強み②を意識し、子どもたちの学びをより豊かなものにできるよう、ともに取り組んでいきましょう。
【著者プロフィール】
公立小学校の講師、教諭、主任教諭を経て、令和3年度文部科学省初等中等教育局GIGA StuDX推進チームに所属し、全国のGIGAスクール構想の推進のために活動。GIGAスクール構想の理念とICT活用の在り方等を全国に発信してきた。今年度は、学校現場に戻り、6年生の担任としてICT活用の実践に取り組んでいる。