第10回 「今、教師に求められる資質能力とは」
東京都板橋区上板橋第四小学校主任教諭
はじめに
GIGAスクール構想により、子どもたち一人一人にICT端末が配布され、学校現場は大きな変換を求められています。その中で私たち教師に求められている力にはどのようなものがあるのでしょうか。ICT端末の活用という視点で捉えてみたいと思います。
教室の中にある多様性 指導観の変換へ
下の資料は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議「Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」〈中間まとめ〉の一部です。
内閣府総合科学技術・イノベーション会議「Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」〈中間まとめ〉より
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この資料では、現代の学校現場には多様な児童・生徒がいるということが示されています。そのような多様な児童・生徒が存在する教室では、一人一人に合わせた学習指導をすることはとても難しいことかもしれません。しかし、教師は児童・生徒がもつ多様さを理解し、学習指導を行っていく必要があります。教室にいる児童・生徒に対し、一律の指導、一斉指導で対応することは困難です。私たち教師は、児童・生徒の多様性に対応できるような学習指導を行っていく必要があると考えています。
下の写真は、私のクラスで調べ学習を行っている様子です。
教科書とノートを用いて一人で調べ進めている児童、友達とともに動画を見てわかったことを話し合いながらJamboardに図式化してメモしている児童、友達と協力しながらGoogleスライドにメモをしている児童、教師に尋ねわかったことをICT端末に記録する児童の姿など、多様な姿が教室に混在しています。学び方は一人一人異なります。自分にとっていちばん学びやすい方法を選択し、取り組んでいます。最後は、調べたことを友達と共有し、表現するようにしています。教師が教壇に立ち、話し合ったことを板書し、ノートに写す、というこれまでの一斉指導では見られない姿がそこにはあります。子どもたちは、自らの疑問などを主体的に調べ、さらなる疑問に向かって学習と向き合います。教師の指示を待ち、立ち止まっている児童の姿はそこにはありません。教師は、学ぶ環境を整え、ファシリテートする。学び方を児童に委ねることで一人一人が自立した学び手となり、動き出すのです。学習の方法が多様化しますが、そこに教師が対応するためには、ICT端末が必要不可欠であるといえます。
学び続ける姿勢を大切にすること
世の中は常に変化しています。今の社会・教育現場には、何が求められているのか、教師自身がアンテナを高くし、学び続けることが必要です。そして、学んだことを実践してみる(アウトプットする)ことも大切です。失敗もあるかもしれません。それは子どもたちに話していることと同じです。失敗は成功につながるチャンスなのです。そして、ぜひ、先生がたも学んだことをICT端末に蓄積し、いつでもどこでも見返せるような工夫をしてみてください。時間や場所、そして学んだことの学習記録により、いつでもどこでも振り返ることができ、新たな目標の設定にもつながります。
文部科学省も、2024年度から教員研修をスマートフォンなどで受けられるようなオンデマンド研修動画に取り組むとの報道がありました。私たち教師もより多くの情報にアクセスできる環境が整うということになります。あとは自分しだいです。主体的に学び続ける教師の姿こそが、子どもにとって、いちばんの学びの環境となるに違いありません。
終わりに
10回にわたり、さまざまな内容についてお届けしてきました。先生がたの悩みや疑問に寄り添えたらと思い、書き進めてきたつもりです。記事の1つでも先生がたのお役に立ちましたら幸いです。ICT端末を目的に合わせて活用することによって、学習指導要領が求める資質能力の育成に、これからも、ともに取り組んでいきましょう。
【著者プロフィール】
公立小学校の講師、教諭、主任教諭を経て、令和3年度文部科学省初等中等教育局GIGA StuDX推進チームに所属し、全国のGIGAスクール構想の推進のために活動。GIGAスクール構想の理念とICT活用の在り方等を全国に発信してきた。今年度は、学校現場に戻り、6年生の担任としてICT活用の実践に取り組んでいる。