第6回 子どもたちの成長上の課題と「社会的スキル」の育成
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神奈川大学人間科学部 非常勤講師 |
皆さんが、子どもたちの自主性を生かして学級づくりを進めようとしても、うまくいかずに悩むことも多いのではないでしょうか。要因は多様で、発達特性など個別の問題もありますが、背景には現代の子どもたちが抱える成長上の課題があるのです。
子どもたちは、希薄な人間関係のなかで孤独感・不安感を強めて内向化し、自己肯定感が低く、他者にかかわることを避ける傾向が顕著です。これは国際比較でも日本の子どもに際立つ傾向です。群れてはいても孤独で、役割や協働を伴う集団形成は苦手、周囲のいじめやけんかを仲裁するなどはまれです。葛藤しながら他と真剣に向き合って仲間となるような「
「人と話すことは楽しい」「人の話を聴くことはおもしろい」ということすら実感できていない子どもたちがいます。自他への不安や不信を内心にもつ現代の子どもたちには、その希薄な人間関係と低い自己肯定感への手当てが必要です。それには基本となる「社会的スキル」の育成を図ることが有効なてだての一つです。信頼関係のなかで自己理解や他者理解を援助し、自己肯定感を確かなものにさせる「自分づくり」の支援が最優先です。次に、自己中心性を克服させながら、「仲間づくり」のスキルを身につけさせ、その上で「集団づくり」のスキルを育成していきます。「社会的スキル」の育成は多様な方法があり、種々のプログラムが開発されて活用されています。ここでは、私も企画にかかわった横浜市の「子どもの社会的スキル横浜プログラム」を以下に紹介しておきます。「自分づくり」「仲間づくり」「集団づくり」のプログラムが、ワークシートや指導案等とともに掲載されています。閲覧してみてください。
横浜市ウェブサイト
【著者プロフィール】
神奈川大学人間科学部 非常勤講師(教職課程)。北里大学保健衛生専門学院 非常勤講師。専門分野は、生徒指導論、教職論、学校経営論、情報メディア論、教育相談。
【略歴】
22年間、横浜市立中学校3校で教諭として(うち8年間は生徒指導専任教諭として)勤める。その後、横浜市教育委員会指導主事、同市立中学校校長、横浜市教育委員会児童・生徒指導担当課長及び部長、横浜市教育センター所長を経て、横浜市立南高等学校校長を務めた。2012年以降は大学教育に携わり、玉川大学教職大学院准教授、同教授、神奈川大学・大正大学等で非常勤講師を務め、2018年から神奈川大学人間科学部特任教授を務め、2022年3月定年退職し、現職。
【著書】
「実践 教職論 ―未来の創り手となる子どもたちのために―」(ナカニシヤ出版)、「モバイル社会を生きる子どもたち-『ケータイ』世代の教育と子育て-」(時事通信出版局)、「子どもの危機と学校組織 ―苦悩する学校を救う鍵は教師の生徒指導力向上とチーム力」(教育出版)