言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
Q21
「よい」か「いい」か
例えば,
~するのがよい。~するのがいい。
~したほうがよい。~したほうがいい。
~すればよい。~すればいい。
~してよい。~していい。
今日は天気がよい。今日は天気がいい。
のように,いずれも標準的な言い方で,意味内容も同じであるが,両者を比べると,「よい」が書き言葉的,「いい」が話し言葉的であるといえよう。
「よい」は,文語の「よし」からできた形容詞で,「よかろう(未然形)」「よくない・よかった,ようございます(連用形)」「よい(終止形)」「よい日(連体形)」「よければ(仮定形)」と活用し,形容詞としての活用を全部備えている(形容詞は命令形の活用がない)。
これに対して,「いい」は,「いい」という終止形と連体形の用法しかない。このため,「よい」と「いい」を二つの形容詞と見ずに,「よい」は,終止形・連体形に「よい」「いい」の両方の形がある変則的形容詞と考えることもできる。
「いい」は,上代の「よし」「よき」の転じた口語形「よい」から変化したもので,江戸時代,関東地方で勢力を得たものと思われる。「よい」から「いい」への変化の間に「えい」「ええ」の形もあったと考えられ,現在でも,方言では「ええ」が広く残っている。
また,次のような連体形の場合は,現在,ほとんど「よい」は用いられないようである。これらは,「いい」がややくだけた言い方であるという意識が強いためであろう。
いい男いい女いい顔いい感じ
いい加減いい気なものいい仲いい迷惑だ
いい気味だいい薬になるいい子になる
いい面の皮いい年をしていいようになる
いいざまだいい恥さらしだいい目が出る
小・中学校の国語教科書では,原作者の用語を尊重したうえで,話し言葉などで「いい」,少し改まった場合や書き言葉で「よい」が多く用いられている。
なお,「よい」を「常用漢字表(じょうようかんじひょう)」にあてはめるとすれば,「善」「良」であるが,いずれも「いい」という読みは認めていない。
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