言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
Q23
「速い」と「早い」はどう使い分けるか
「速」は「速球・速攻・速刻・速成・速断・快速」などと用いられ,「一定の距離を動くのに(あるいは,一定の行為を行うのに)要する時間が少ない」という意味である。また,「速度・時速・風速」などのように,「速さ・スピード」の意でも使われる。したがって,「決断が速い」「呼吸が速い」「球が速い」「車の出足が速い」「流れが速い」などは,「速」を用いる。
これに対して「早」は,「早朝・早暁・早春・早退」などのように「物事を始めたり終わったりする時期や時刻が前である」ということ,あるいは「朝のまだはやいとき」の意で,「時期が早い」「気が早い」「起きるのが早い」,また,「早帰り・早咲き・早死に・早じまい・早出・早手回し・早作り・早寝・早番・早引き」などと用いる。
したがって,「速い電車」といえば,特急などのスピードの出る電車のことであるが,「早い電車」は朝早く出る電車や順番が前の電車のことである。
また,「早い」は,転じて「物事を急いで行う様子」の意味にも用いられる。「早合点・早のみこみ・手早い」などがそうである。しかし,「物事を急いで行う様子」と「速」の「所用時間が少ない」の意味の違いを判断するのはむずかしく,むしろ,これらは慣用によっているというべきであろう。 例えば,「早打ち・早撃ち・早馬・早かご・早鐘・早変わり・早口・早道・早耳・早業」なども同様で,「早」を用いるのが一般的であるが,意味からすれば,「速」を用いることも否定できない。現在使われている国語辞典・用字用語辞典のほとんどは「早」を用いているが,「速」を用いているものもある。
なお,動詞として「はやめる」「はやまる」があるが,この使い分けも「速い・早い」の使い分けと同じで,「速度を速める・速度が速まる」,「出発を早める・出発が早まる」のように用いる。
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