言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
Q24
「......士」「......師」「......司」はどう使い分けるか
「栄養士」「美容師」「保護司」など,資格や職業名につく「士・師・司」の使い分けの問題である。使い分けは,それぞれの漢字のもつ意味の異同に基づく。 まず,「士」は「成年の男子」「役人」の意味で,転じて「学問や教養のある人」「事を処理する能力のある人」「さむらい」をいい,称号や職業名につけた。
楽士・騎士・義士・紳士・闘士・武士・弁士・名士・勇士・力士・烈士
この用い方に由来して,「士」はまた,国家試験等によって取得できる,次のような資格の名称にも用いる。
栄養士・海技士・技術士・技能士・行政書士・建築士・航空士・公認会計士・歯科技工士・司法書士・税理士・測量士・土地家屋調査士・不動産鑑定士・弁護士・弁理士・ボイラー技士・理学療法士
次に,「師」であるが,これは「多くの人々」「いくさ」の意味があり,「師団」「出師」などの語に用いられている。また,転じて「教え導くもの」をいうようになり,次のように接尾語的に用いられて,技術者や専門家を示す。
技師・教師・講師・牧師・伝導師・仏師・導師・漁師・猟師・講釈師・人形師・能楽師・表具師・宣教師
このような用い方に由来して,「師」は次のように一定の職業に就く資格の名称に用いられる。
医師・衛生検査技師・きゅう師・歯科医師・獣医師・診療放射線技師・調理師・調律師・はり師・美容師・薬剤師・理容師・臨床検査技師
これらも国家試験等で取得できる資格の名称である。その他,訓読語について「占い師・鋳物師・軽業師」などのようにも用いられる。
最後に「司」であるが,字訓の「つかさ」「つかさどる」は,「役所」や「公の仕事を取り扱う人」を意味し,
行司・宮司・郡司・国司・祭司・斎院司(さいいんし)・造酒司(さけのつかさ・ぞうしゅし)
などの言葉が生まれた。この用い方の延長の職名として,
児童福祉司・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司・保護司
などがある。いずれも特別の職務の名称であり,前記の「......士」「......師」とは異なる。これらのうち「......福祉司」は地方公務員,「保護司」は法務大臣から委嘱を受けた民間人である。
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