言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
Q29
「とてもいい」という言い方は正しいか
「とても」は,「とてもかくても」が略されてできた語である。東京語としては,明治のころには,「とてもできない」のように,打ち消しの表現を伴う用法だけであった。しかし,大正・昭和に入ると,「とてもきれいだ」のように使われるようになり,今日,話し言葉では,ごく普通に使われる。初めは打ち消しの照応のある陳述の副詞だけだったのに,のちに程度を表す副詞が加わり,それが一般化したものである。現在の国語辞典で「とてもいい」「とてもきれいだ」というような用い方を示していないものはない。
上に述べたように,現代語としては,「とても」は否定的にも肯定的にも用いられ,どのような叙述を先導しているとはいえない。しかし,一般に陳述の副詞(叙述の副詞)といわれるものは,それ自身,表現者の気持ちを直接的に表し,さまざまな叙述の仕方・態度を先導し,その叙述と呼応する。
(1)推量と呼応するもの
おそらく おおかた さぞ さだめし 多分
→だろう/でしょう
(2)打ち消しと呼応するもの
決して 必ずしも 少しも たいして ちっとも とうてい めったに ろくに 一向に 断じて
→ない/ぬ(ん)
(3)疑問・質問と呼応するもの
なぜ どうして なんで
→(の)か
(4)依頼と呼応するもの
どうか ぜひ どうぞ なにとぞ
→ください/くれ/ほしい
(5)仮定と呼応するもの
もし たとえ 万一 かりに
→ば/ても(接続助詞)
(6)たとえと呼応するもの
まるで あたかも さも さながら
→ようだ/ようです/みたいだ
(7)打ち消しの推量と呼応するもの
まさか
→まい/ないだろう/ないでしょう
この記事は,画面の幅が1024px以上の,パソコン・タブレット等のデバイスに最適化して作成しています。スマートフォンなどではご覧いただきにくい場合がありますので,あらかじめご了承ください。