言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
Q32
「少なそうだ」か「少なさそうだ」か
この「そうだ」は,学校文法では「様態・伝聞」の助動詞として取り扱い,その接続と用例を掲げると,次のようになる。
(1)動詞・動詞型活用助動詞の連用形につく
ありそうだ できそうだ 来そうだ 出られそうだ
(2)形容詞・形容動詞・形容詞型活用助動詞の語幹につく
強そうだ 悲しそうだ 残念そうだ 読みたそうだ
以上が原則であるが,ク活用の形容詞で,語幹が一音節である「よい」「ない」につく場合に限って,
よさそうだ なさそうだ
のように,間に「さ」を入れて接続する例外がある(ちなみに,語幹が一音節のほかの形容詞,例えば「濃い」になると,間に「さ」が入りにくく,「濃そうだ」が普通である)。また,動詞に,打ち消しの助動詞「ない」のついたものに「そうだ」が接続する場合には,
知らなそうだ 打てなそうだ
のように,間に「さ」を入れず,原則を適用するのが普通の言い方である。
したがって,以上の原則からすると,形容詞の場合は語幹につくから,「少なそうだ」が正しい言い方で,「少なさそうだ」は誤りということになる。
ところが,実社会では「少なさそうだ」もかなり用いられて,この両者は語形のゆれの一つとも見られている。多分,「少ない」の語尾を形容詞の「ない」のごとく類推して「少なさそうだ」が用いられるようになったのであろう。
[補足①]「情けなそうだ」か「情けなさそうだ」か
「情けない」の語構成の意識によって,語形のゆれが生じた例である。つまり,「情けない」を一語の形容詞として考えるならば「情けなそうだ」を採るし,「情け」が「無い」という二語意識が強いと考えるならば「情けなさそうだ」を採る言い方が生じてくる。
[補足②]「くだらなそうだ」か「くだらなさそうだ」か
これは,「くだらない」を一語の形容詞,または「ない」を打ち消しの助動詞と考え,「くだらなそうだ」とするのが正しい言い方であるが,形容詞「ない」にひかれて,「くだらなさそうだ」も多く使われているのが実情である。
この記事は,画面の幅が1024px以上の,パソコン・タブレット等のデバイスに最適化して作成しています。スマートフォンなどではご覧いただきにくい場合がありますので,あらかじめご了承ください。