言葉のてびき
教育出版株式会社 編集局
手紙の用語
1 頭語
前文の最初に書くあいさつで,「拝啓」が一般的である。これを頭語という。
拝啓......「へりくだって申し上げます」という意味になる。同種の語に「拝呈」「啓上」がある。
謹啓......「つつしんで申し上げます」という意味で,特に丁重な場合に用いる。「粛啓」「恭啓」など。
以上が基本的な形であるが,ほかに用途に応じて次のような頭語を使う。
急啓......「急いで申し上げます」という意味。
再啓......返事が来ないときなどに使う。「再呈」「追呈」も同種の語。
前略......前文を「省略」する意味。「略啓」「略陳」もある。
冠省......これも前略と同じ意味。ほかに「前省」「略省」がある。
拝復......「へりくだってお答えします」という意味で使う。ほかに「復啓」「啓復」がある。
なお,女性の場合は,堅苦しい頭語を避けることがある。言い換えは次のようになる。
拝啓→ 一筆啓上申し上げます。
謹啓→ 謹んで申し上げます。
急啓→ 取り急ぎ申し上げます。
前略→ 前文お許しください。
拝復→ お手紙承りました。
親しい仲で手紙をやりとりするときは,頭語を省いてもよい。死亡通知,弔慰状,年賀状,暑中見舞いには使わない。
2 時候の挨拶
これには,漢語を用いる場合と,口語体を使う場合の二通りある。どちらを使うかは,手紙の種類,内容によって決まる。
3 安否の挨拶
時候の挨拶のあとにつづけて書く。
〔相手方〕
○その後はいかがお過ごしでしょうか。お伺い申しあげます。
○先生にはますますお元気でご活躍のこととお喜び申しあげます。
○貴社ますますのご隆盛,慶賀の至りに存じます。(相手方が会社のとき)
○貴所いよいよご盛栄の趣お喜び申しあげます。(相手方が官庁のとき)
〔自分側〕
○下って,私ども一同,おかげさまで無事消光しておりますゆえ,他事ながらご休心のほどお願い申しあげます。
○なお,当方あい変わらず元気にいたしておりますゆえ,ご心配無用に願い上げます。
ところで,相手方の安否などを取り上げたあと,感謝やおわび返信のあいさつへと続くのであるが,これは時と場合によるので,ごく簡単にふれておく。
〔感謝の言葉〕
○毎度格別のご厚情を被り,厚くお礼申しあげます。
○日ごろは何かとお世話になっておりますこと,心から感謝しております。
〔おわびの言葉〕
○一別以来ご疎遠と相成り,汗顔の至りに存じます。
○その後のごぶさた,心からおわび申しあげます。
○いつも何かとご迷惑ばかりおかけし,まことに申しわけございません。
〔返信のあいさつ〕
○昨日はご丁重なお手紙,ありがとうございました。
○このたびはご懇篤なご書面,ありがたく拝見いたしました。
○ますますご健勝の趣,心からお喜び申しあげます。(相手の安否を気づかう。)
○折り返しご返信申すべきところ,心ならずも延引いたしましたこと,ご容赦のほどお願い申しあげます。
4 結語
末文のあいさつのあと,最後に書く言葉で,「敬具」が一般的である。これを結語という。
敬具......「以上,敬って申し上げました。」という意味。「拝啓」「拝復」「再啓」に対して用いる。
敬白......「敬具」より丁重な語。「謹啓」に対して用いる。
草々......「急いで書いたので十分意を尽くしておりません。」となり,「急啓」「前略」に対して用いる。
なお,女性で堅苦しい漢語を好まない場合は,「かしこ」「さようなら」となる。
5 自他に関する用語
○相手方......ご尊父様・ご母堂様・ご両親様・ご祖父様・ご祖母様・ご主人様・奥様・ご令息様・ご令嬢様・ご令孫様・ご令兄様など。
○自分側......父・母・両親・祖父・祖母・主人・家内・子ども・息子・兄・姉
また,手紙の場合,特別の漢字が上につく用語がある。
○相手方......御地・御社・御状・貴社・貴地・貴家・貴意・御芳書・御芳名・御高配・御高承・御厚志
○自分方......当地・当方・当社・当店・弊社・小社・拙宅・拙著・粗品・卑見・微志・微意・薄志
この記事は,画面の幅が1024px以上の,パソコン・タブレット等のデバイスに最適化して作成しています。スマートフォンなどではご覧いただきにくい場合がありますので,あらかじめご了承ください。