こうしてみよう! Small Talk
第2回
Small Talkの提案 ~『ONE WORLD Smiles 5』 Lesson 1 Nice to meet you.~
第2回から、『ONE WORLD Smiles 5』の各単元のSmall Talkについて提案をしていきたいと思います。
Lesson 1は、5年生としてのスタートとなる単元です。この単元では、自己紹介に加えて、アルファベットで自分の名前を示すことが求められています。
既習事項を思い出させる教具を活用して
Small Talkにおいて、単元で扱う言語材料のほか、既習の表現をどのように提示するかということについては、指導者の単元構成力とダイレクトに関わってきます。学習者の実態(当該学年までの英語体験や関心等)を十分把握したうえで、語彙や表現などの言語材料の選択を考えなければなりません。
さらに、既習事項といっても、すべての学習者が身につけているわけではありませんので、既習事項を「想起」させる手段が必要となるでしょう。
言葉を想起させるためには、実物、絵カード、動作(gesture, movement)等を活用することが有効です。さらに、内容を段階的に深めていく教具を用いたいものです。どのような学習でも例外なく、スモール・ステップで学習を構成することが、学習者の確かな理解や定着につながるからです。
Small Talkの提案
私が指導する場合、段階的に理解を深められるよう、本単元においては3回のSmall Talkを計画したいと考えます。
ポイントとしては、段階的に子ども自身の活動につなげるように、"How do you spell your name?"の活動を取り入れること、自分の出身地についての話題を加え、子どもが知っているものを引き出すこと、口頭で話すだけでなく、地図や絵カード、写真などの教具を効果的に活用することなどが挙げられます。
また、段階的に定着を促すよう、教具の使い方にもひと工夫をします。好きな(嫌いな)ものについて話す際に、絵カードに「○」「△」をつけたもの(○はlike、△はdon't likeを示す)を準備し、以下のように活用します。
1回目:絵カードに 〇と△(○はlike、△はdon't likeを示す)をつけたものを用意し、それを示しながら実施する。
2回目:○△のついていない絵カードを用意し、それを示しながら実施する。
3回目:絵カードを使わずに、(指導者の)音のみで内容を聞き取る。
進め方についても、同じ内容ではなく、回を追うごとに扱う話題(カテゴリー)を増やしていくことも可能です。既習の語彙・表現を活用し、指導者の自己表現を広げていくとよいでしょう。
以下に、Small Talkを私自身が行う場合の、展開の一例を示します。これは、単元の前半・後半、どこであっても実施可能な内容です。
※下線*1、*2の表現については、展開例のあとに観点を記しています。
準備物
● 指導者の名前をアルファベットで記した掲示用資料
● 指導者の出身地の地図
● 食べ物などの絵カードまたは写真
(挨拶、名前のつづりについて)
T:Hello, everyone. Nice to meet you.
My name is Toshihide. T-O-S-H-I-H-I-D-E, Toshihide.
(黒板に掲示したアルファベット文字を追いながら進める)
How do you spell your name? *1
(児童それぞれが、テキストのアルファベット表(『ONE WORLD Smiles 5』裏表紙うらなど)を追いながら進める)
Good job!
(出身地について)
T: I'll introduce myself.
(旭川市の載っている地図を示して)I'm from Asahikawa.
Do you know Asahikawa?
S:(Asahiyama zoo, Daisetsuzan, Ishikarigawa, ...)
T:Good.
(好きな食べ物、嫌いな食べ物について)
T:(絵カードまたは写真を示して)This is my favorite food. What's this?
(学習者「カレーだ!」) Yes, that's right.
I like curry and rice. It's delicious.
I don't like sweets. I don't like candy. I don't like chocolate.
How about you? What food do you like?
S1:I like sweets. I like chocolate very much.
T:Oh, you like chocolate?
(1回目は○や△をつけた絵カードを利用、2回目は○や△のついていない絵カードを利用、3回目は音声のみで聞かせる。聞かせる内容は、食べ物のほか、スポーツや果物、動物など、既習のカテゴリーを活用する。)
(好きな色について)
T: How about colors? *2 I like blue. What color do you like?
S1:I like blue.
T:Oh, me, too.
以下、展開例に盛り込んだ表現や展開方法について解説します。
① *1 How do you spell your name? ―この表現をどこで使うかに関しては、Small Talkを単元のどこに位置付けるかで変わってくるでしょう。この表現を児童が理解していなければ、Small Talkで使うことはできないため、必然的に単元後半での位置付けとなるでしょう。私が構成するSmall Talkでは、この部分に十分に時間をかけ、繰り返し、学習者にも同様の活動をさせていきたいと考えます。
② このLessonのSmall Talkは、児童が「聞くこと」だけにとどまらず、対話形式(指導者の問いに学習者が答える形式)によるコミュニケーション活動が十分に可能です。すなわち、次の学習の段階で、Small Talkを発展させ、"How do you spell your name?"と、学習者同士が互いに名前のつづりを伝え合うアクティビティにつなぐことが可能と考えます。そのため、Small Talkにおいても、段階的に負荷をかけていくことが求められるでしょう。
③ *2 How about colors? ―この対話文の中で重要な一文と言えるでしょう。この文があることで、話題の切り替えが自然になり、"What ... do you like?"を矢継ぎ早に連発するような、機械的な対話を避けることができるためです。
第3回は『ONE WORLD Smiles 5』 Lesson 2 When is your birthday? のSmall Talkの提案です。