水泳指導が始まります。安全に楽しく学習するために必要な指導を教えてください。
【答え】
最優先することは,危機管理です。健康状態と人数の確認です。
まず,健康状態の確認です。保護者からの水泳指導に関するカード(その日の健康観察と水泳指導参加の許可を記入したカード)と,学級での朝の健康観察との両面から健康状態を把握しておくことが重要です。もし,いつもと違う様子が見られるときは,必ず,養護教諭や学年主任,管理職に相談しましょう。
また,人数の確認も確実にします。プールに入る子どもと,見学する子どもとの人数を名簿で把握しておきましょう。
そして,プールから出たときにも,必ず人数を確認します。バディとして二人組を作っておきましょう。教師だけでなく子どもどうしでも,相手を確認しあうことができます。
二重三重に確認の手立てを取っておくことが事故を未然に防ぐことにつながります。
【なぜ】
水泳指導は,常に命と背中合わせの学習です。水泳カードに記入してある体温など,必要事項の確認をすると同時に,教師自身も子どもの顔色やいつもと違う様子がないか確認します。入門期の子どもに自分の健康状態を言葉で伝える力はありません。しかも子どもは,多少体調を変だと感じていても「プールに入りたい」という気持ちが優先し「大丈夫」と言ってしまうことがあります。ですから健康状態を看取ることは教師の責任でもあります。
「これくらい大丈夫だろう」という気持ちが,大きな事故につながります。事故を未然に防ぐ気遣いが重要なのです。
【方法】
事前指導とプールでの指導,そして事後の指導に分けて考えましょう。
事前指導
(1)バディを作りましょう
安全に学習するための二人組です。自分たちで安全に学習しているのか,お互いに確認し合う,大切なペアであることを指導しておきましょう。
「バディ,オー」など,二人で手をつなぎ上にあげて掛け声をかけます。
バディであることの意識をもたせることができます。安全面の確認もできます。
(2)水泳カードの重要さを指導しましょう
水泳カードを提出することで,水泳学習に参加できることを指導します。
保護者にカードの重要性を理解していただき,必ず提出することができるよう,協力をお願いしましょう。カードを忘れたことで学習に参加できず,学習意欲を低下させたり,登校を嫌がったりすることへつながってしまうこともあります。
記入は保護者がすること。参加の確認のためのカードであり,カードの記入や提出がないと参加できないことをきちんと伝えておきましょう。
特に水着や水泳帽子,カードなど,忘れた場合の指導が担任によって違い,子どもや保護者の不審をかってしまうケースがあります。「プールに入れないのはかわいそう」という気持ちで指導を見失わないように,指導者として学校全体の約束に準じた指導をしましょう。
(3)着替え方や脱いだ洋服のしまい方,上履きの置き方や場所など,方法と場所を指導しましょう
特に配慮することは,身体的な特質への配慮です。アレルギーなど他人に見られたくない傷やあざなどがある場合があります。事前に保護者と相談しておくことが子どもの心や身体を守ることになります。
プールサイドでの指導中
(1)プールサイドでの歩き方や動きの流れ,並び方を指導しましょう
教室で指導しておいても,実際にプールサイドに立つと,入門期の子どもにとっては,見たこともない大きなプールであり,まったく違う世界に感じます。水が苦手な子どももいます。その子どもたちにとっては,まさに驚異の場所にも映ります。
具体的にその場所その場所で,繰り返し指導を重ねましょう。「あそこにタオルをかけます。」と反対側の壁を指さして指導している姿をみかけます。子どもにはどこなのか,わかりません。タオルを掛ける位置に手が届きにくい子どももいることを忘れないようにしましょう。
○ゆっくり歩くこと
○バスタオルは,名前や自分のものだと特徴がわかるように,かけること
○バディで並ぶこと
など,具体的な言葉で,約束として指導します。
(2)学習中の約束を徹底しましょう
全体指導の先生の合図を守るよう指導しましょう。
水の中に入っていると,声や音は聞こえにくいものです。興奮して学習に取り組んでいると,水から上がる合図を聞き逃したり,聞こえていても水の中に残っていたりと,緊張が緩んでしまい事故につながることも考えられます。
安全のために必ず約束を守ることを繰り返し指導しましょう。
事後の指導
(1)衛生面での指導を中心に指導しましょう
○目をよく洗うこと
○濡れた水着などのしまい方
(2)水泳学習カードは,当日すぐに返却します。その日のうちに持ち帰るよう,指導しましょう
○自分の名前を確認して,しまうように指導します。
○濡れた水着と一緒に入れないよう,「連絡帳と一緒に」など具体的に知らせておきましょう。
水を怖がる子どもへの支援や指導
水に慣れていない子どもは,顔に水がかかるだけでも嫌がります。シャワーで水に濡れる感覚から始め,教師が手を取って一緒に水に入りましょう。
指導中は,子どもが「大丈夫」という姿を見せるまで,手を離さないようにしましょう。教師を信頼して「こわい水」に入るのです。「このくらいいいだろう」と教師の思い込みで手を放したら,二度と水に入らなくなります。教師を信頼しなくなり,その後の指導にも大きく影響します。
教師との信頼関係で学習が成り立つのはほかの教科の学習と同じですが,命と背中合わせの学習です。いつも以上に,子どもの気持ちを考えて指導に取り組みましょう。