運動会や遠足の絵を描きます。いつも同じような作品になり,気になります。どのような指導が必要ですか。
【答え】
「絵に表す楽しさ」が広げられるよう,画用紙の大きさや形を工夫しましょう。
「背の高いものは高く,横に長いものは長く」表現したい対象の特徴を生かして絵に表すことができたら,こんなに楽しいことはありません。
【なぜ】
「学校にある一番背の高い木を描きたい。」高さのあるものを描くときには,画用紙を縦において描くよう助言しますが,向きを変えただけでは十分に高さを表すことは難しいと考えます。
そこで縦においた画用紙の幅を切ると,同じ画用紙ですがより縦長に見えます。
同じように横に長いものを描くときには,横置きした画用紙の縦の幅を切ると,横に長く見えるようになります。まるで電車が何両にもつながっているかのように長さを感じることができるのです。
ともするとどのように描くのか,技法の指導が中心になりがちですが,低学年の指導の目ざすところは「描くことを楽しむこと」です。「自分の背丈と比べて木はこんなに高い。」と思っても,一年生にはそれを表現する力の育ちは十分とは言えないのです。
「絵に表すことの楽しさ」を広げるために技法ではなく,紙の大きさを変えるという発想が大切だと考えます。
紙の大きさを変えるだけで,特徴を生かした表現に変わり,描く楽しさがグンと広がるのです。
【方法】
市販の画用紙を切って使います。
例えば玉入れのように高さが必要な画面には,縦に長い画用紙。綱引きや電車など横の長さを強調したい画面には,横長の画用紙を用意します。どの用紙を選ぶのか慣れるまでは,先生が支援しましょう。
玉入れ(横)
玉入れ(縦)
☆画用紙の色を工夫して「絵に表すことの楽しさ」を広げます。
色画用紙を使うと,クレヨンの発色が変わります。
例えば,プールで泳いでいる様子を絵で表します。白い画用紙の場合は遊んだり,泳いだりしている姿のほかに,水をどのように表現するのか,難しそうです。
そこで画用紙を青や水色の色画用紙に替えて,描いてみましょう。すでに水は,色として表現されていますから,遊ぶ姿や泳ぐ姿を描くだけで,水の中の楽しそうな様子を容易に表現することができます。
また,青空を飛ぶ雲のくじらを描くとしましょう。白い画用紙でしたら,青色や水色で空を描かなければ空の中が伝わりにくい。これを水色の色画用紙を使って描くと,水色の紙に真っ白いくじらが鮮やかに発色します。
いずれも一例ですが,思い描いた情景を表現する楽しさを味わうことができるでしょう。白い画用紙を色画用紙に替えるだけで,絵に表す楽しさを広げることができます。
では,さまざまな場面を思い浮かべて色を考えてみましょう。
例えば運動会の絵。徒競走や綱引き,玉入れやダンスなど肌色やクリーム色の画用紙にしてみましょう。クレヨンの発色も明るくなり,楽しそうな声や音が感じられる表現が生まれると考えます。
どんな場面にも使える色は,水色やクリーム色。そして意外にもグレーが素晴らしい。
子どもたちは,好きな色や見かけのきれいさで選んでしまいますが,グレーはどの色のクレヨンも美しく鮮やかに発色します。表現したいものがより美しく表出できます。
どのような表現には何色が合うか,先生方でいろいろ試してみてください。
色画用紙を選ぶ指導では,三色ぐらいを基本に提示します。「何色が合うかな,楽しいかな。」と子どもに問いかけながら,一緒に考え選ぶとよいでしょう。色に対する感覚を育てることにもつながります。
色画用紙に描いたプールの授業