☆コラム 教科書と私~教科書を教える教師だった私から,教科書で教える私に~
教科書は各学年の子どもたちにつけたい力を指導するために適切と考えられた教材を,段階を追って掲載しています。
ですから,授業では,教科書の教材を掲載順に教えていけばよいと思いがちです。しかし授業改善での考え方で教科書の使い方を考えてみますと,
○まずつけたい力を考える。
○そのために適切な教材を選択する。
○そしてどのような活動を工夫するか,
となります。
教科書は教材を順に教えるためのものではなく,力をつけるために適切な教材が掲載されているものだと意識を変えることが,今,求められていると考えます。
かくいう私も,かつては「教科書の教材を順番に教える教師」でした。初任のころには先輩の先生方からそのように指導も受けました。教科書を教える時代だったのです。
ですから,教科書の教材をとにかくこなすことだけに追われ,「教科書は終わったけど,子どもたちに力がついているのか不安だ。」と教材は教えてもどのような力がついたのかまでは実感できていませんでした。つけたい力が見えていなかったために指導が焦点化されず,教材を曖昧に教えていただけだったのです。
しかし,伝え合う力の研究をした時に,どのような力をつけるのかを意識して授業づくりをするよう指導を受け,つけたい力を明確にもち指導に取り組みました。
すると,教材の選び方や使い方,授業の展開,そのための活動などが,ねらいからぶれることなく力をつけることに結び付き,子どもたちに目に見えて力がついたことを実感することができました。
それまでの私は,教科書の使い方は教材を教えるだけで,教材を通して何を教えるのかが分かっていなかったのです。このことをきっかけに,自信をもって指導することができるようになり,授業することが楽しくなりました。今から20年近く前のことです。
教科書の教材は,つけたい力や子どもたちの実態により選択することが重要です。より良い教材を探すこと,開発することも教材研究の重要な一面です。
教科書を教える教師から,教科書で教える教師へと意識を転換しましょう。