小学校生活
☆コラム 指導案を書き始めても迷うことが多く,書きあげられず困っています。
指導案は着地点を決め,そこからぶれないで書くことです。なぜなら研究に終わりはなく,授業は「いきもの」,常に進行・継続しています。したがって,着地点を決めないとゴールが見えず書きあげることができないのです。
まず,つけたい力を決めておきます。つけたい力を曖昧なままにして書き始めると,活動を並べるだけで,指導計画や本時展開がつけたい力からぶれてしまうからです。
さらに重要なことは,つけたい力は一単位時間に一つです。したがって評価規準も一つなのです。ここを誤ると「どのような力を」「どのようにつけていくのか」指導するゴールが見えなくなり,「授業はしたけれど,力はつけられなかった。」ことになってしまいます。
若い頃,授業研のたびに講師の先生から「何をやろうとしているのかわからない。」と言われ続けてきた私は,今でも「ぶれない!」を自分の合い言葉にしています。
そして,研究授業は自分の力を向上させる大切な機会です。そのためには,事前研究の充実を図りましょう。授業前の検討が,より力をつける授業づくりになると共に,授業者以外の先生方にも力をつけることになります。事前研究は,一年から六年までの系統で見ていくことが大切です。各学年でつけたい力の意味や,その学年でどのような力が重要なのかを見渡すことができるからです。
(1)指導案全体を俯瞰します。
- つけたい力を決める。
- 評価規準を決める。
- 教材を決める。
- 指導計画を決める。
- 本時を決める。
(2)4つの視点で本時展開を考えます。
- 学習内容(つけたい力)
- 学習活動
- 時間
- 空間
指導案を書きましょう。
(1)指導案全体を俯瞰して一つ一つの意味を確認します。
- つけたい力を決める。
単元全体を通してつけたい力を決め,さらに一単元時間ごとのつけたい力を決めます。 - 評価規準を決める。
一単元時間ごとに評価規準を決めます。一時間目には評価規準はありません。なぜなら一時間目は単元を通してどのような力をつけていくのかを知る時間です。したがって,意欲も関心も生まれてはこないからです。 - 教材を決める。
つけたい力がつく教材かどうかを見極めます。教材を教えるのではありません。教材を通して指導するのです。ですから指導する内容に即して教材をよく読み込むなど教材への理解を深めます。例えば音読を通して心情を理解する場合,自分自身が繰り返し音読してみます。どのように読むと心情を感じ取ることができるかを実感することが大切です。また言葉の理解が必要なのかにも気付くことができます。教材のどの部分がどの力をつけることに適しているのかを考えます。 - 指導計画をつくる。
子どもの実態を把握して指導時間の見通しをもちます。指導書等は,一般的な立場で書かれています。どこに時間をかけたいか,日頃の学習中での理解や活動の姿を想起して自分の学級の子どもに適した計画を考えます。授業は指導者と子どもとでつくっていくものだからです。 - 本時を決める。
単元の中心となる時間を選びます。中心となる時間はつけたい力がより明確になり,指導者の考えが見えます。子どもの考えの拾い上げ方,考えをさらに高める支援や助言,理解に時間のかかる子どもへの指導や支援などを通して,「力のつく授業とはどのような授業か」その考え方が,よく見えるからです。日頃の指導が正直に出てしまい厳しいですが,授業力を高めることのできる大切な機会です。自分のためにそして子どもたちへの責任として,単元の中心となる時間を本時として決めましょう。
(2)4つの視点で本時展開をつくります。
- 学習内容(つけたい力)
一単位時間につけたい力は一つです。「どのような力をつけたいのか」を明確にします。不十分な力を補てんするのではなく,「さらに力を高めるために」と前向きな考え方で取り組むことが重要です。 - 学習活動
活動を書き終えたら,思考が深まるように展開しているかを考えます。思考が深まるとは,推理小説で例えるなら,段階を経て徐々に解決に近づいていく感覚です。学習活動での段階は課題から自分の考えの予想をもち,それが正しいかを試していきます。自分だけでは解決できないことは友達の考えを聴いたり試したりしながら,修正し答えを見つけていくのです。これが「思考が深まっていく」ことです。したがって,思考が深まるように活動が設定されることが重要なのです。他とかかわれる活動や自分の答えを見つけられる一人での活動などが必要なのです。思考が深まる活動の在り方を見直すことが重要です。 - 時間
一番大事な部分に時間をかけることができるように時間配分をします。
全体での思考,一人学びやグループでの話し合いなど活動によって時間のかけ方が違います。どこでどのような活動にどれくらい時間をかけるか,全体を俯瞰し中心になる活動の時間を確保します。他の活動時間は残り時間を逆算して決めます。また,思わぬところに時間がかかることがあります。例えば課題の把握。何をするのか目指すゴールが理解できない子どもは その都度言われた活動をするだけで,力をつけることは難しくなります。入門期ではまだ一単位時間ごとに課題を把握する時間の確保が必要かを考えます。
さらに形態を変える場合,例えば机の並べ替えなどでは,慣れていないと無駄な時間がかかります。動いている間に集中力が途切れ,学習が散漫になりがちです。初めての形であれば練習しておくなど安心して活動できるようにしておきましょう。 - 空間
学習場所を考えます。入門期の子どもが集中して思考や活動ができる時間は10分ぐらいです。ずっと机に向かうだけでなく教室全体を広い空間ととらえ,使い方を工夫します。例えば音読中心であれば,一人読みの場や友達に聴いてもらう場。全体で話を聴く場と一人で考える場など,ねらいにそって工夫し,楽しく豊かな学習空間を工夫しましょう。