低学年でも子どもの歌声がきれいになる指導のコツを知りたいです。
【答え】
発音の仕方にコツがあります。国語科の学習と関連しています。
【なぜ】
きれいな歌声とは,ひびきのある歌声のことです。
ひびきと聞くと特別な発声法のように感じますが,国語科での発音の学習と深く関連しています。 なぜならひびきは,口の開け方と母音をのばす発音の仕方で生まれるからです。高学年のようなより立派なひびきについては既述の項に書きましたが,口の中に大きなトンネルやお風呂をつくり,声を響かせることで生まれます。
しかし,低学年でのひびきは,発音そのものにより簡単に生み出すことができるのです。しかもこの方法は,勿論高学年の合唱指導にも十分力を発揮しています。
低学年にひびきのある声など必要ないと考えていませんか。従前のような頭声発声をさすものではありません。気持ちよく聞こえる歌声。話す声と歌う声の違いを明確に実感できる歌声です。
歌声の指導は,歌唱の技能の習得だけでなく,音楽そのものを楽しむことのできる大変重要な内容です。しかしそれにもかかわらず,具体的にはふれられていません。したがって,具体的に歌唱表現を高める指導への教師の意識もほとんどないと言えます。ですから,低学年の子どもの歌というと,力いっぱい大きな声を出すことという実態になってしまうのです。
これでは音楽の学習を積み重ねても歌声は変わらず,学習していても何も成果が実感できません。自分の成長や音楽本来の楽しさを味わい実感することはできないのです。この歌声指導をしていないと子どもたちは歌うときに単に言葉をつた音を歌と認識しているだけで,本来の歌う楽しさや喜びを実感することは難しいのです。歌声が変わることを実感できると,子どもはそれをきっかけに音楽への関心を高め,意欲的に学習に取り組み力をつていきます。子どもの「自分が変わる,を感じ取る力」の大きさに驚きますよ。
【方法】
とても簡単な指導です。口を縦に開き,力を抜いて息をのばす感じで声を出すのです。ひびきを実感してみましょう。
頬杖をつくように両手で頬を包みます。指は開いても閉じても大丈夫。声を出すと顎の骨が振動するのが実感できます。これがひびきです。子どもたちは次々と「震えている」と嬉しそうな声をあげます。
まずは簡単なことから体験してひびきを実感しましょう。口を軽く閉じてハミング(私は子どもたちに唇を一ミリ開けてと言っています。子どもは唇をギュッと結んでしまうためひびきが生まれにくくなりますから)。
頬杖ポーズをしてフ~~ンと声を出してみましょう。ぶるぶるひびきが伝わってきます。子どもは,つい力を入れてフーと出します。その時すかさず「さっきと同じひびきかな?」と声をかけ,頬杖ポーズを促し「震え」を意識させますしょう。子どもたちはすぐ力を抜いてひびきを意識するようになります。この指導を繰り返していると,いわゆる「地声」から「ひびきのある歌声」に変化してきます。
子どもたちが実感できる指導を工夫することで,子どもたちは歌声が美しくなったことを実感でき,歌う楽しさや音楽の学習をすることそのものへの意欲も高まってくるのです。
この指導は,国語科の「話すこと・聞くこと」の指導と関連させることが重要です。国語科,音楽科の双方の教科での指導により,歌声だけでなく音読や発言等,表現する力へ,グンと広がっていくのです。歌を通しての具体例を別項に記述しますので参考にしてみてください。