Q1.入学したばかりの子どもたちにどのように指導したらよいでしょうか。
Answer
新1年生の見方を変えてみましょう
新1年生は「誇り高き年長さん」
入学式の時のうれしそうで不安そうな顔,式が終わって戻る途中でのさまざまなおしゃべり,教室に戻り席に自分の席に座ってじっとこちら(担任)をながめる目...かわいらしい様子に,笑顔になると同時に,「さあ,これから小学校のことをいろいろ教えていかなくちゃ。」と気負ったり,「何から始めたら,小学生らしくなるのだろう。」と少し不安に思ったりすることも,当然あるかと思います。特に,初めて新1年生の担任となる場合はなおさらでしょう。
そこで一つ深呼吸して立ち止まってみてください。
多くの子ども達にとって,集団生活は初めてではないのです。幼稚園,保育所,認定こども園等で3月まで,「最上級生」(年長さん)として,自分たちで遊びや生活をつくりながら,園の中でのさまざまな役割を引き受け,年下の幼児たちのお世話をしたりお手本となってふるまったりしてきた子どもたちであることを思い出してみてください。静かに並ぶこと,集まって話を聞くこと,トイレや水飲み場といったみんなで使う場所を正しいやり方で使うことなどは,日常の生活として行ってきているのです。
今回の学習指導要領改訂においては,幼児期から高等学校までの子どもの資質や能力を育成する観点からも「学びの連続性」が繰り返し言われています。小学校入学の際の子どもは,「小学校に入ったばかりの何も知らない1年生」ではなく,「幼稚園や保育所等で年長さんとして活躍し,経験を積んできた1年生」であり,園の最上級生として活躍してきた「誇り高き年長さん」を終えてきた子どもたちなのです。
まずは子どもたちに聞いてみましょう
入学前に子ども達が過ごしてきた幼稚園,保育園,認定こども園いずれにも,小学校の学習指導要要領に対応する教育要領,保育指針,教育・保育要領があります。その中で幼児に育みたい「資質・能力」を押さえながら,「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)が示されています。この「10の姿」とは,健康な心と体,自立心,協同性,道徳性・規範意識の芽生え,社会生活との関わり,思考力の芽生え,自然との関わり・生命尊重,数量や図形・標識や文字などへの関心・態度,言葉による伝え合い,豊かな感性と表現が含まれています。例えば「おみせやさんごっこ」をしようと話し合う幼児の姿には,協同性や言葉による伝え合い,社会生活との関わりなどを見ることができます。園の先生方は,小学校との接続を踏まえ,その「10の姿」の内容を意識しながら,指導計画を作成したり,日々の実践の中で子ども達の姿を見たり,評価したりしています。
このようにして,入学前に多くの経験をし,たくさんの「学び」を得ていることを,まず理解しなければなりません。何でも指導しようというスタンスでなく。子どもたちに聞いてみましょう。
「みんなで集まるとき,園ではどうしていたの?」
「お水を飲むときには,どんなやり方があるのかな?」
どの子も,いきいきと答えてくれるはずです。
「静かにして先生を見るんだよ」
「並んでお水を飲んで,飲んだあとは蛇口を下に向けるんだよ」と。
歌や遊びなども,何が好きだったか,どんなことをしていたのか,ぜひ尋ねてみてください。こうして入学前の経験を尋ね,それを大切にする姿勢を子どもたちに示すことが,「安心できる学校生活」の第1歩となるはずです。