提言「はじめてのGIGAスクール実践」(3)
東京学芸大学教授
東京学芸大学教育学部・教授 博士(工学)。総合教育科学系教育学講座学校教育学分野に所属。独立行政法人教職員支援機構客員フェロー(2020年~)。教育工学、教育方法学、教育の情報化に関する研究に従事。中央教育審議会臨時委員(初等中等教育分科会)(2019年~)、文部科学省「教育データの利活用に関する有識者会議」委員(2020年〜)、「ICT活用教育アドバイザー」(2020年〜)、「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」座長代理(2021年~)等を歴任。
〈小学校教科通信 2021年5月号より〉
3. まずは先生が慣れること。それを授業に生かそう
新しいことが多くありますので、まずは先生が慣れるところから始めるのが重要です。いきなり授業で使うのではなく、まず業務の中で使ってみましょう。その際、
・試しに、使ってみる
・よかったら、続けてみる
・ダメだと思ったら、やめてみる
これくらい楽な気持ちで、どんどん業務で活用している地域が成功しつつあるように思います。授業で子どもに一人一台端末を活用させる前に、先生自身が職員会議や教員研修で一人一台端末、クラウドをフル活用してみて、そのメリットや限界を身体的に理解することが重要です。
現在のクラウドサービスは、機能が多岐に及んで、使い勝手のよいものが多く、業務でも授業でも同様に使えるくらい完成度が高いと思っています。従来のICTサービスは専門的な部分もありましたので、学校では子ども用ソフトや教育専用ソフトを活用することが一般的でした。しかし、今やスマホなどで子どももICTに慣れてきていますので、一般的な大人用のソフトでも上手に使えます。先生にとっても、わざわざ教育専用ソフトの使い方を覚えて、習熟して、指導法を考えるのは大変です。ふだんから業務に使っているソフトを授業でそのまま使えるのであれば、指導法の研修だけで済みます。例えるならば、子どもの成長に合わせてサイズを変える「バイオリン」から、大人と同じ楽器で最初から練習する「ピアノ」を使う時代になった、といえます。
子ども用ソフトや教育専用ソフトの活用も効果的ですが、子どもたちが卒業したあとも役立てやすいノウハウを学べるという意味でも、汎用のクラウドサービスをまずは活用してみてはいかがでしょうか。