第1回 ディベートの実践
発信力を高める必要な学びのスキルと形態の工夫
~「協働的な学び」でディベートに挑む!~
加瀬政美 (千葉県旭市教育委員会 外国語教育アドバイザー)
1 「評価シート」を活用して自己調整を促す
『教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol. 5<中学校版>』(2023 年 10 月発行)英語科の「教科の視点」の続きで、令和3~6年度用『ONE WORLD English Course 3』のProject 3「ディベートをしよう!~Boxed Lunches vs. School Lunches~」をどのような手順や形態で行うと発信力を高めるためのスキルが定着するのか、という視点で工夫例を紹介します。
ここでは、今まで身に付けた知識・技能を用いて、賛成派と反対派の2つのグループに分かれて説得力ある意見を交えて議論します。ディベートはそのような場面や状況のなかで、思考力・判断力・表現力の育成を図ることができる活動のひとつです。そして、ここでのポイントは、第3のグループ、判定チーム(Judgment Team)を準備させておくことです。賛成派と反対派がディベートを行う間、ディベートを行わないグループが判定チームとなります。判定チームでは、双方の意見を主体的に聴き、より説得力があるのはどちらの意見か、そして双方の発言者から学ぶべき表現は何か等、「評価シート(Evaluation Sheet)」を活用して、メモをとります。メモをとり、他者を評価することを通して、討論時の仲間と自らの姿勢や態度、使う表現を比較します。そうすることで、生徒は自己調整を行い、主体的に学習に取り組む態度の育成につながっていくのが利点です。
また、次のような課題の解決の一助にもしたいものです。準備した自分の言いたい表現に固執するあまり、「相手の意見をよく聴いて、理解が不十分だったら聞き返す」等の技能があっても、ディベート時に使えないという中学生が少なくないというのが現状です。コミュニケーションの第一歩は、相手の言いたいことをよく聴くという姿勢です。コミュニケーション活動の前に、自分の言うべきこと、言いたいことを練習して、そしてコミュニケーション活動に展開していきます。ペアを組んだら、双方が自分の言いたいことを言って、次の相手とのペアに移ります。活動後、聞き取った内容を生徒に質問してみると何も覚えていないという言語活動をよく見かけます。自分の言いたいことだけ相手に伝えるのではなく、まずは聴くという姿勢、そして発言された内容は全部記憶できないので、適度にメモをとる習慣をぜひ身に付けさせたいものです。
▲「評価シート(Evaluation Sheet)」
2 英語でディベートをする必然性の工夫
生徒は「日本人なのになぜ英語でディベートしなくちゃいけないんですか。」という素朴な疑問をもつことがあります。トピックを次のように設定することをお勧めします。
・来日した外国人と一緒に「東京ツアー」を企画した。電車で行くか、バスで行くか?
「来日した外国人と一緒に」という設定があるだけで、生徒は「英語でやらなければ」、という意識に傾きます。どんな言語活動においても、コミュニケーションを行う目的・場面・状況の設定は忘れてはいけません。
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