第5回 技能統合型の指導
「一人一台端末」を活用した技能統合のパフォーマンステスト
〜リテリングを通した自己表現力の育成〜
加瀬政美 (千葉県旭市教育委員会 外国語教育アドバイザー)
今日の中学校英語教育の現場では「聞いた内容について話す・書く」「読んだ内容について話す・書く」といった「統合的な言語活動」を通した指導の充実が求められています。しかし、そのテスト・評価の実施方法について悩まれている先生も多くいらっしゃると思います。今回は令和3~6年度『ONE WORLD English Course 2』のLesson 4 Part 3の指導後に行うパフォーマンステストを例に、「一人一台端末」を活用したテスト・評価の手順やポイントを紹介します。
1 テストと評価の構想を明確に!
今回の例では、自分のことについて英語で即興的に表現するテストの前に「リテリング」を行います。
*リテリングとは、文章を聞いたり読んだりした後に、その内容を補助的なメモ等を見ながら、他者に伝える活動です。生徒に教科書本文中の語彙・表現を定着させ、アウトプットの質を向上させるのに効果的です。
リテリングを行うときには、その内容をLesson全体に関わるものにする場合と1つのPartに焦点化する場合が考えられます。今回は生徒の負担を考えて1つのPartに焦点化します。また、事前に以下のようなテストの内容や評価について、生徒に告知しておくことも大切です。
(1)時期・回数
・年間2回
・1回目:2学期の定期テストのパフォーマンステスト(10月~11月頃)
・2回目:3学期末に実施予定
(2)範囲・形態
・2年Lesson 4 Part 3
・個人用タブレットの録音機能を活用したスピーキングテスト
(3)テスト方法
① 英語の文章を読んでメモをとり、リテリングに向けて要点を整理する。
(制限時間)3分
② リテリングを含む課題2問に回答する。
(制限時間)1分×2問=合計2分
(4)評価基準
評価基準は、1回のテストで全ての項目は使用しません。学年や学習状況を考慮して、使用する評価項目を決めましょう。
2 「一人一台端末」を活用した技能統合型テスト
千葉県旭市では、Microsoft Teamsを活用したテストを実施しており、上記の評価基準を含めて市内の中学英語教員で共有しております。それでは、そのテストの手順をご紹介します。
(1)Microsoft Teams内の動画を再生。画面に映る以下の英文を3分間で読み、メモをしながら要旨をまとめます。
※ PowerPointの「画面切り替えのタイミング」の機能で各スライドの表示時間を設定した動画を作成しており、上記の画面は3分間しか表示されません。
(2)動画を見終えたら、Microsoft Teamsの「課題」に添付された2問の口頭テストを開き、以下①~②の手順で録音する。
① 画面に自分が映り、マイクのゲージが動いていることを確認して、「開始」をクリックします。
② 制限時間1分以内に話し、終わったら「終了」をクリックします。
※「音読練習」機能を活用すると、生徒が話している動画が記録されて便利です。本来は音読用のスクリプトを表示させるところを、上記のようなテスト指示を書いたファイルをインポートすると、色んなスピーキングテストに活用することができます。
この方法なら個別テストで膨大な時間をとる必要もなく、生徒のテストの様子が記録にも残るので、効率も良く教員にとっても落ち着いて評価がつけやすいですね。
3 生徒の発話を評価する!
複数の英語教員で一学年を指導している場合は、指導と評価のコンセンサスをしっかりと取っておく必要があります。そうすれば、評価について生徒や保護者から問い合わせがあった場合でも、客観的な信頼性と妥当性のある評価であることを説明することができます。また、このパフォーマンステストを実施し分析的評価を行うと、生徒の課題が明らかになってきます。テストが終わったら、生徒自身でも同様の評価項目の観点で振り返ることが必要です。テストの後に、自分のパフォーマンスについて記述形式で振り返りをさせ、自分のできた部分とできなかった部分を確認させましょう。自分の課題を意識しながら、その後の活動に取り組むことでこそ成長に繋がります。
聞いたり読んだりした文章についてリテリングを行い、仕上げとしてその内容に関わる即興的な自己表現を行わせる技能統合的な指導をする際には、具体的なテストおよび明確かつ客観的な基準での評価が必要です。そして、さらにその評価を次の指導に繋げる、というサイクルを意識しましょう。このような「指導と評価の一体化」を行うことが、全国学力・学習状況調査において課題になっている英語運用能力育成に効果的な指導に繋がってくるのではないでしょうか。
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