6.常時机の中やロッカーがものであふれている子ども
☆気になる子どもの5,6,7の三つの項の子どもには,事象は違っていも一見共通した原因があるようにみえます。例えば持ち物が多すぎること。要るもの要らないものの区別がつかないこと。片付け方がわからないこと。片付けを自分でして来なかったのでしなくてもよいと思っていること,などです。ですから,片付け方の指導さえすればどの子どもも大丈夫! と考えがちですが,視点を変えてみるとそこには特徴的な原因が見えてきます。そこで,項目ごとに原因を焦点化して考えます。
ものであふれている原因を考えてみましょう。「要るものと要らないものとを区別することができない」のではないでしょうか。大人にも思い当たるように感じるのは私だけでしょうか。
要るか要らないかの判断は大人でもなかなかできないものです。迷っているうちに物がどんどん増えてくるのが現実です。子どもに「これは要る物? 要らない物?」と聞いても子どもは「全部要る」または「わからない」と応えます。大人でさえ判断ができないからこそ,次々に収納や片付けの本が出現するのだと考えます。
そこで,子どもには「要る・要らない」という判断力の素地を育てる取り組みが必要です。
学校における子どもにとって要る物とは「必ず持ってくる物」,要らない物とは「持ってきてはいけない物」と考えましょう。これらの持ち物は学校や学級で約束として決められています。にもかかわらず,なぜ物が増えていくのでしょう。
子どもは,時に必ず持ってこなければならない物を忘れ,反対に持ってきてはいけない物を持ってきます。それらのものがいつの間にか「持ってきてもよい物」に代わり,机の中に溜まって行きます。「持ってきてもよい物」とは「友達に見せたい」「持っていたい」と個々の感覚であり,その結果,際限なく物は増えていくのです。「これは持ってきてはいけない」と思いながら持ってきてしまうのが子どもです。
指導の初めは子ども自身に何をどれだけ持っているのかを実感させます。そのために「これはどちらの仲間かな」と子どもに問いかけながら持ち物を分類します。分類することで「何を」「どれだけ持ってきているのか」を実感させることができます。特に持ってきてはいけない物については,約束の確認やその理由について再度指導します。
学校は他者と生きることを学ぶ場です。約束を守ることを通して,自分で考え判断する力をつけていくのです。「学校で使う物かな」などと問いかけ「約束は守る」ことを指導しましょう。
そして,子どもへの指導は具体的な作業を一緒に行うことが重要です。
よく見かける残念な光景です。「これは必ず持ってくる物ね」と子どもに声をかけながら先生が物を分類していて,当の子どもはそばで見ているだけの姿です。これでは,いつまでたっても,子どもが自分でできるようにはなりません。一緒にするというのは見守ることと考え,作業は子どもにさせます。