10.知識はあるが,今,指導していることを行動に移せない子ども
行動に移せない原因を考えてみましょう。
(1)聴いていなかったから,何をするのかがわからない場合。
(2)聴いていたが,何をするのか内容が理解できない場合。
(3)聴いていたが,どのように行動するのか方法がわからない場合。
(4)いつ行動するのか,迷いながら周りを見ている場合。
(5)みんなに話したことは,自分とは関係ないと思っている場合。
(6)したくなければしなくてもいいと思っている場合。
(7)隣の子どもが何もしないので,自分に自信がないため聴き違えたかなと思っている場合,など。
それぞれの子どもの姿を多面的に十分に見取ることが重要です。
「知識はあるのに自分で行動ができない」このような子どもにはどのような指導が必要でしょうか。「覚える学力」はついてきていても,「考える学力」が十分でないのです。入学したての頃には学習したことを褒められる機会が多くあります。子どもたちは褒められることが大好きですから,嬉しくて意欲も高まります。入門期の子どもは同じことを繰り返しすることが得意なので,無意識のうちに多くのことを「覚える」のです。
ですから,「よく覚えているね」と褒められ「覚えていることが多いほど,よく学習している」と認められるのです。そこで,子どもは「自分はよく勉強している」と思い込んでしまう場合があります。ですから「自分で考える」必要も習慣もなかなかついていかないのです。
しかし,今「覚える学力」から「考える学力」へと転換しているのです。「自分で考えること」の習慣をつけていくことがこの時期に重要な指導なのです。
そして,考える学力は聴く力が基盤です。ですから,「今,なんて言った?」と教師の話も友達のつぶやきも「聴きかえす」ことを繰り返し,まずは聴く習慣・聴く力をつけ,考える力につなげていきましょう。
さらに,対人関係についても考えましょう。幼児期の対人関係と同様に教師対自分という個人の関係では受け止められても,集団の対峙では「自分が話しかけられている」という意識が薄いと考えられます。
「○○さん,伝わったかな?」と,名前を呼ぶことが有効です。自分が話しかけられているのだと気づき「自分から聴く」意識化を図ることができます。ほかの子どももその姿を見て,自分にも声がかかると意識するようになります。学級全体に「聴く意識」が広がり,聴く力がついてきます。そして,授業に限らず学校生活のすべての部分で継続して取り組むことが考える力をつけることにつながります。