初めて1年生を担任します。入学式の前日。教室の準備をします。気をつけることはどのようなことですか。
【答え】
清潔な教室環境を整えましょう。照明や日照,掲示物や空気まで明るいこと。そして必要なものだけを備え,机の横や椅子には何も物を掛けません。全ては子どもたちの安全・安心を基本に,自由に安全に活動できる教室づくりを心がけましょう。
【なぜ】
「環境は人をつくる」と言われています。初めての学校生活。子どもも保護者もあらゆる面で期待しています。子どもたちに育てたい力を考えると,どんな教室にしていくのか,環境への考えはおのずと決まってくるでしょう。
必要なものだけに囲まれ,清潔な環境で生活していると,子どもたちはその心地よさを実感します。自分の身のまわりをどのように整えるのかの具体的なイメージをもつこともできるのです。
つい飾り付けなど掲示物を多くすることを考えがちです。たくさんのものがあふれ,飾りが過剰にあると物や色までもあふれ,落ち着かなくなります。逆に物が少ないことは,目にするものが少なく,落ち着きます。
大人の中には,「散らかっていないと落ち着かない」という人もいます。しかし,私たちは教師です。自分の主義主張と子どもたちに育てるべき力や価値観とを混同してはいけません。「子どもに何を育てるのか」そのために「教師の役割は何か」を考えましょう。
【方法】
床の掃き掃除や拭き掃除はもちろんですが,ごみ箱のごみも片付けておきましょう。そしてごみ箱は,座っている子どもたちの視線に入らないところに置きましょう。
教師のために置いているのでしょうか。黒板の横など,学習に向かう子どもたちの目の前にごみ箱が置かれている教室が意外に多く,驚きます。
ごみ箱やごみがあふれた状態を見て毎日の生活をしていると,身のまわりは「汚いことが当たり前」になってきます。
また,耳の痛い話ですが,意外に教師の机が書類や私物の山積みで,乱雑に見えることがあります。特に入学式後,日が経つにつれ山が高くなります。入門期の子どもにとって教師は全てのお手本です。整頓された教師の机は,自分の机の姿と同じなのです。子どもにとってのお手本であることを,強く意識して清潔・整理・整頓を実践しましょう。
「誰も教えてくれない小学校入門期の指導」は,「なぜその指導が必要なのか。」「その指導は,どんな力を育てることにつながるのか」を考えることから始まります。
そして「小学校入門期の指導」は,学校教育目標の実現のための基盤となる内容であるという課題意識をもつことが重要だと考えます。
小学校入門期の指導は,経験カリキュラムとして,1年生を担任した教師の経験から生み出された内容が多く,その指導内容や指導方法は,個々の教師の取り組みにとどまり,他の教師に広がることは少ないと感じています。
しかし入門期における指導内容は,2年生以上の学年で育てたい力の基盤となります。ですから,入門期の指導を全学年の教師が理解し取り組むことで,学校教育目標の実現に結びつけることができるのです。
さらに,今求められている「読解力」を育てることにもつながる,重要な内容です。入門期の指導の重要性を考えることは,学校教育目標の実現という,学校経営そのものに関わる内容です。
このシリーズでお示ししている入門期の指導には,重要なポイントがあります。それは,「なぜこの指導が必要なのか」その理由です。理由を理解することなく指導に取り組み,形だけ真似をしても「つけたい力」を育てることに結びつけるのは,難しいのです。理由を理解するとは,「指導のねらい」を理解することです。
お示しした「なぜ」を参考に,「指導のねらい」を明確にして指導に取り組んでいただけると,このシリーズが少しでもお役に立てるのではないかと考えます。