☆コラム 学び続ける教師でいよう ~脳科学や生命科学を活用していますか。~
一昔前まで科学は,科学者のものというイメージをもっていたのは私だけでしょうか。最近の科学の発展は,私たちの日常生活に関する研究も著しく進み,多くのことが明らかになってきました。
例えば,私たちが毎日食べる食べ物は「生命を補うもの」と言われていましたが,「生命を刷新するもの」であることが明らかにされてきました。ですから,細胞が生まれ変わるときに正しい食べ物を食べることが大切だと気がつきました。正しい食べ物とはいろいろな考え方がありますが,私は添加物や薬剤などの身体に影響を与えるリスクが少ないものととらえ,食材への考え方を変えてきました。
このように,今まで当たり前に考えてきたことや,行ってきたことの考え方の根拠が明らかにされたことで,取り組み方が変容してきていると考えます。
では,日々の学校での取り組みとの関連はどうでしょう。明らかになってきた脳科学や生命科学の考え方は,発達段階における子どもの能力を明らかにし,カリキュラム作りや指導方法の工夫,授業改善等を考える上で大きな意味をもつと考えるのです。
学校では,ともすると,教師同士の経験や習慣でその内容が語られ,伝えられることがあります。それはそれで有効であることもありますが,もし科学の研究を生かして考えると,さらによりよい教育ができるのではないかと考えるのです。
例えば,音楽活動。低学年の子どもの脳は未分化なので,二つのことは同時にはできません。手拍子を打ちながら歌うことは,大人にとっては何でもないことです。しかし,入門期の子どもにとっては,歌うか,手拍子を打つか,どちらか一つしかできません。教師が声をからして「手拍子を打ちながら,歌うのですよ。」と叫んでも,子どもにはできないことなのです。「分担して交互に行う」など,活動を工夫することができます。
また,生命科学の視点から生活への指導を見直すと,「朝食をとり,排泄を済ませて登校すること」という指導をしています。空腹も排泄も体の調子を整えるために必要ですが,朝食抜きや排泄なしの子どもも見られ,保護者の方の関心もそれぞれで異なります。
もし,ここに生命科学の視点として体内時計の原理から,排泄の必要性を指導したらどうでしょう。「なぜ,そのようなことが必要なのか。」体の原理として排泄の時間であり,誰にでもあてはまることであるという根拠が明確になり,必要性の理解が高まると考えます。さらに朝食の内容を考える必要性にも気づくでしょう。排泄のための時間ですから,あまり重い朝食を摂ったのでは,排泄のエネルギーが消化に使われ,朝食は摂ったのに排泄がない,という本末転倒のようなことになります。
このように,活動の工夫やカリキュラム作り,授業改善への取り組みに,脳科学や生命科学の考え方を生かすと,これまで以上によりよい指導ができるようになると考えます。
私は,常に学び続けることが,大切だと実感しています。