子どもの言動や行動を「これはいけないことではないかな。叱らなければ。」と感じても,指導を迷うことがあります。「何を」「どのように」指導すればよいのか教えてください。
【答え】
次の三つを指導しましょう。
(1)順番を守ること
(2)友達の悪口を言わないこと
(3)ぶつ,蹴るなど,どんなときにも手を出さないこと
毅然とした態度で指導しましょう。保護者から「先生が叱らないから困る」という声を聴くことが多くなっています。「叱る」とはどのようなことでしょうか。指導として考えていきましょう。
【なぜ】
子どもたちの中で起こる困りごとは,小さなけんかやもめごとです。
その原因は,気持ちのちょっとした行き違いや言葉の未熟さからの思い違いです。大人から見ると,こんなことでと思う程です。
なぜ,こんなことでけんかをするのでしょう。1年生の子どもには,「何が誤りで」「何が正しいのか」が十分にはわからないからです。判断の物差しは自分であり,わがままを通そうとすることもあります。自分が言っていることがわがままであることさえ気づかない,わからないのです。また,わかっていてもわがままを通そうとする子どももいます。それが子どもです。ですから,いけないことはいけないと,きちんと指導しないと子どもは育ちません。
しかも,先生が指導しないと子どもは「先生はわがままを言っているのに怒らない。」と感じ,「何をしても叱られない」「何をしても叱ることができない先生」へと,その思いが発展していきます。一人の行いが学級全体へと広がり,勝手なことをする集団へと向かうのです。
子どもの価値観を育て,互いがもっとよい人間関係をつくる機会ととらえ,教師として毅然とした態度で,かつ愛情をもって指導しましょう。
【方法】
どの子どもに対しても「いけないことはいけない」と厳しさをもって指導を徹底します。厳しさとは,教師の感情をぶつけることではありません。厳しさとは「いけないことは何か」を正確につかみ,その内容に対してぶれることなく,毅然とした態度で指導に当たることです。
1年生の子どもは,言葉よりも大人の態度でその価値や重要性を感じ取ります。ですから,教師が落ち着いた態度で向き合うことが重要なのです。大きな声を出して叱りつけても,一瞬子どもはわかったような態度になりますが,理解したわけではありません。教師の声の大きさに驚いただけで,これを繰り返すと条件反射のように,大きな声に反応しているだけで指導の効果は望めません。
◎指導の内容の意味は次の通りです。「順番を守ること」は,我慢することや譲り合うことを通して,認め合い自分も友達も大切にする心を育てます。
「友達の悪口を言わないこと」は,言葉の暴力はいけないことだという気づきと,価値観を育てます。
「手を出さないこと」は言うまでもなく,どんな時も人に手を出すことはいけないこと,暴力はいけないことという判断力や価値観を育てます。
1年生の子どもは自分の思いを言葉で伝える力が十分でないため,我慢ができなくなると,「ぶつ」ことで自分の感情を伝えようとします。中には,教師に気づかれないように,隣の席の友達をつねることもあります。特別なことではなくよく見られる姿です。手を出すことはいけないことだと子どもは知っています。でも感情が抑えられなかったり,方法が思いつかなかったりしているのです。だからこそ,言葉でも身体でも暴力はいけないことだと,教師が厳しく指導することが重要なのです。いけないことはいけないと,叱ってくれる教師に,子どもは強い信頼を感じます。
ここでは,基盤となる「いけないこと」を取りあげましたが,数々の指導しなければならない内容があります。社会生活をしていくために,どのような価値観を育てるのかを日常から意識的に考え,指導の引き出しを増やしておくと自信につながります。
正しいことを指導し育てることのできる教師として,自信をもって取り組みましょう。