「気になる学級」に支援に入る場合の盲点 ~ 残念な支援者にならないために ~
ここ数年,学校では離職者や療休者が増加する傾向にあります。
さまざまな理由があってのことですが,せっかく希望をもって教師になったのです。できるだけ支援していこうと,周囲は力を尽くしています。
担任が休暇に入っている学級の場合は,子どもの指導だけに重点をおくことで解決に取り組んでいます。
しかし,ここで気になるのは,その一歩手前の「気になる学級」です。
「気になる学級」とは,あと一歩で崩壊するかもしれないという「危うい」と感じる学級のことです。この段階で周囲が気付いて適切な支援をしていくことで,離職や療休にならざるを得ない方々を,少しでも減少させることができるのではないかと考えます。
そこで考えたいのは,目ざすゴールと支援の在り方です。
担任が休暇に入っている場合と「気になる学級」とのゴールは一見似ているように見え,実は全く違うからです。目ざすところを間違えて誤った支援をしてしまうと,子どもにも担任にもそして支援者にとつても,労多くして実りない残念な結果になってしまいます。
「気になる学級」におけるゴールは,学級の建て直しと担任を育てることです。そのための適切な支援ができれば,子どもたちと教師との双方を救うことができるのではないかと考えます。
そこで「気になる学級」での適切な支援について二つの視点で考えます。
1.支援者として,一つは子どもたちの思いとの「ずれ」に気づくこと
時として子どもは担任に対して逆らう,暴言を吐くなどのこともあります。しかし,その理由を探ってみると,意外にも教師の気をひくためであることも多いのです。子どもにとって担任は大好きで,大切に思っている存在なのです。わざと逆らって困らせ,自分だけを見て欲しいとアピールするのです。
「気になる学級」だと気づくことは大切ですが,一時の現象だけを見て,思い込みで「助っ人」に入ることは子どもたちにとっても担任にとっても望ましいことではないのです。
子どもの実態から,なぜそのような言動や行動をするのかについて担任と十分に話し合うことから支援を考えることが重要です。子どもの姿の見取りを十分に行います。
さらに原因の多くは授業です。授業力がついていないと,子どもたちは敏感に感じ取り,ついてこなくなります。しかし,授業力は学ぶことでついてくるのです。特に経験の浅い教師に授業力を求めるのは,まだ難しいかも知れません。しかし,子どもたちはよくしたもので,一生懸命に指導に取り組む教師にはついてくるのです。むしろ応援してくれています。授業力をつけるための支援に取り組みましょう。もちろん,子どもに力をつけることのできる授業です。経験や原体験に基づく授業ではなく,「新しい授業観」をもって支援を考えましょう。
2.支援者として,もう一つは,学級を立て直すために担任を支援すること
今は子どもの指導に窮していても,元々は子どもたちから慕われている担任です。担任を尊重する気持ちを忘れないことです。担任とその学級の子どもたちとの信頼関係を紡ぐことを目ざしての支援にとどめることが重要だと考えます。
子どもの指導を滞らせないことは最重要課題ですが,それと同時に,教師として悩める担任を育てていくことを忘れてはならないのです。
担任自身が何とか崩れかけた学級を立て直そうと頑張っている以上は,どのように指導を進めることが望ましいのか,支援者は担任と十分に話し合うことが重要なのです。経験上のアドバイスも貴重ですが,子どもの実態を十分に把握しないまま,見えている現象だけで判断して指導に取り組むのは,適切なアドバイスや支援とは言えないと考えます。立て直しの経験のある教師は自分の指導に自信があり,どうしても経験上での方法で,支援者自身が学級を立て直すことに重点をおき,担任の存在を忘れた「残念な支援」に陥りがちです。
子どもの言動や行動から何を見取るのか。支援者は担任の話のなかから読み取り,どのような指導に結び付けていくのかを一緒に考えましょう。
そして「教師は授業で勝負」する。「気になる学級」の大きな一因は授業力の低さです。授業力をつけることが最大の課題です。授業を通して子どもの心を育てることを視点にしながら,授業力がつくよう支援しましょう。