学年主任として,学年会のもち方について具体的に知りたいです。
中心的な内容三つをあげておきます。
① 学年会の意味を意識して,話し合いの中心を明確にしておきます。
② 学年ノートを作って,生きる記録を工夫します。
③ 学年会は教室で行います。
【答え①】
学年会の意味を意識して 話し合いの中心を明確にしておきます。
子どもの指導や学年・学級での課題の話し合いを中心に,話し合います。特に学級の問題については丁寧に話し合い,担任に明日の指導が見えるような結論や具体案が見える話し合いにすることが大切です。
【なぜ】
なぜなら,学年会の意味を意識していないと,話の内容が散漫になり.時間はかかっても内容の充実には繋がらないからです。
学年会の話し合いでは,「何のために」「何を話し合い」,「何を決めるのか」を焦点化しておくことが重要なのです。
もちろん,学年内での人間関係を培うことも大切な内容です。それは,子どものために「いい仕事」をしていくことを通して,よりよい仲間となり互いが成長できるのだと考えるのです。お互いのつながりを深めるためだけの場にならないよう気をつけましょう。
【方法】
事前に学年主任として話題にしておきたいこと,担任から互いに話題化しておきたいことなどを聴いておきます。
回覧のように簡単なメモを回して書いてもらうと,全員が話し合いの見通しをもつことができます。内容についての考えを事前にもって話し合いに臨むことができ,充実した話し合いになります。また,他の人の問題から自分と共通した内容を見つけ学年全体での問題発見につながることもあります。そして,内容によっては,時間をかけなければならないことも事前に把握できます。
【答え②】
学年ノートを作って,生きる記録を工夫します。
記録する内容は,話題とそれに対する意見,そして結論など,構成を明確にして記録します。
【なぜ】
なぜなら,話し合いは互いの意見により,よりよい結論を得るためのものです。しかし,話しているうちに話題が多様化し,いつのまにか話し合いの焦点が曖昧になります。話はしたけれど「あれはどうなったのかな。」と結論が出ないまま終わることが間々ありました。
すると,結論は個人での判断となり思いの違いを生みます。当然実践の場では食い違いが生じ,子どもたちを混乱させてしまい,そのことが担任への不信にもつながります。記録は共通理解を確認するための大切なものなのです。
記録方法は構成を決めておきます。なぜなら,誰にでも生きる記録をとることができます。そして続けやすくなります。
生きる記録は,二つの意味をもちます。
一つは今の学年での共通理解の記録であり実践においての「確認」になります。もう一つは,次年度の役に立つという意味です。今年度の実践や反省をもとに,次にこの学年をもつ人たちへの,メッセージとなるのです。
「何をどのように考え実践し」「どのような成果や課題があったのか」を知ることで,一つ一つの課題や問題への考え方や解決に向けての参考となるだけでなく,この学年の学年経営における見通しをもつことができるという,大きな意味があるのです。
学校経営は,単独にその学年が一年間もって終わりではありません。一年から六年までを通して一つの学校であり,その学校における学校教育なのです。
ですから,同じ学年でもその年により,取り組みでの特徴をもつことは大切ですが,意味ある取り組みにしていくためには,「積み重ね」が重要なのです。そのためには前年度を知り,その上に今年度を積み重ね,そして先へとつなげること,それが学校全体への経営につながっていく,この考えに気づき,実践することが重要なのです。
残念ながら,各学年での取り組みが次に生きることなく,担任により学年の成果に違いが出ることが多くみられます。子どもたちに申し訳なく感じているのは,私だけではないと考えます。
【方法】
開始時刻と終了時刻など日時や参加者名,場所をまず記録します。参加者名の意味は参加できなかった人への連絡や意見交流ができていないことの記録にもなります。後で記録を読んで共通理解してもらいます。
次に,話し合いにおいての記録は,話題を項目別にして記録します。
『話題―話し合いでの意見(記名します)―結論』と項立てをし,できるだけ箇条書きにしておくと読みやすく,活用しやすくなります。考えがまとまらないときは,「考え中。再提案」など,話し合いでの状況を書き込んでおきますが,必ず「いつまでに決めるのか」期限を明確にしておくことが大切です。期限を設けていないと多忙な毎日で,曖昧になりがちだからです。
【答え③】
学年会は教室で行います。
各教室を持ち回りで行います。
【なぜ】
学年会は同学年の担任同士が,互いの学級経営を「目で見る」ことのできる機会でもあります。それぞれの取り組みのよいところを学び合える絶好の機会です。教室という物的環境の整え方から,子どもを大切に思う心やそのための考え方が,見えるからです。
以下の視点は,あえて残念な例をあげます。
清潔さや安全性への配慮は,そのまま子どもたち一人一人への配慮につながります。例えば掲示物の美しさ。どのように掲示して美的感覚を育てようとしているのか。子どもの目線を意識して,子どもに見やすく工夫されているか。破れや貼り忘れなどないか,すべてが子どもを大切に思う心の現れです。
そして,子どもたちの持ち物の整理整頓の状況や掲示物の中身などから,子どもの状況を一目瞭然に見取ることができます。
ロッカーや机の中の入れ方などの乱雑さからは,心の乱れが見えてきます。自分自身や友達関係への不安や荒んだ心情がみとれます。掃除用具入れの扉が開いたままになっていることも,学級全体の物事への雑さが見てわかる状況です。
掲示物からは字の乱れ,習った漢字は使えているかから学習への取り組みやついた力の状況,そして添えられた教師の一言からは意欲がもてる支援となっているかなどが見えてきます。
「え,こんな風に見られるなんて,私の教室には来ないで」と思う方もいるでしょう。厳しいと感じますが,人の目が入ることで,自分の取り組みを振り返り,よりよい指導ができる教師として力を高めることができます。自分自身を成長させる機会と捉えましょう。何より自分の取り組みを見てもらえるだけでなく,他の教室での取り組みも見られるのです。いい取り組みを見ることはいい授業を見ることと同じです。
私も含めて耳の痛い話ですが,誰でも,自分をよく見せたいと思う気持ちがあります。言葉ではいくらでも「きちんと指導している」と言えます。しかし実際とはずれがあります。なぜなら『きちんと感』は,人により大きく違いがあるからです。
教師は子どもに指導をする仕事ですから,個人の感覚をそのまま子どもたちへの指導観とするのには,疑問があります。ですから,互いに見合うことで自信や改善へと結び付け,教師としての力を高めていくのです。
【方法】
教室は順番に持ち回りとするなど,固定することなく見合えるようにします。「いいな」と思う工夫も,「改善した方がよいのでは」と思うことも,どのような小さなことでも気づいたことは声に出しましょう。
新出漢字の掲示一つ見ても,学べることがあります。書き順だけでなく使い方や文までも表示している教室もあります。書き順を色別に表記している例も数多く見ています。教師からの提示だけでなく,子どもたちが漢字を使った文づくりをカードに書き,新出漢字の横に「使い方」として掲示している例もありました。教師の指導と子どもの学習とが一体化している姿に,担任の先生の温かさと子どもたちとの信頼関係を感じました。
一方残念ながら新出漢字が掲示されていない教室もあり,取り組みの違いに疑問を感じました。
子どもの視線に数多くの掲示物が並ぶことは,落ち着きを欠くことにつながりますが,適切な内容を適切な場所に掲示することは,学習環境としての教室の役割の一つです。
このように自分の指導観を見直し,互いに高め合える場として,教室での学年会をお勧めします。
学年会の時間の確保のための工夫
- 予め時間を決めて会をもつことが長続きの秘訣。
だらだら話す学年会は時間の無駄に感じ,参加が鈍る。
お互いに自分の仕事ができる時間を確保できるよう配慮する。 - じっくり話し合う必要がある話題のときは,事前にお互いの都合を調整したうえで時間を決める。
- 事務的な連絡は簡潔に済ませる。予めメモして前日に渡しておくと,お互いに前もって目を通すことができ,内容の把握や質問等の時間が省ける
各担任にはそれぞれの事情があり,退出時間も日により違いがあります。
学年主任として,各担任への心遣い,気持ちよく仕事に取り組め,力を十分に発揮できるよう配慮することも大切な仕事です。