自分の考えをもち工夫することが大事だとわかっていても「自分の考え」が見えてきません。つい何かを参考にして済ませてしまい,指導について考えることが苦痛になっています。
【答え】
考え方の「基準」をもつと,楽になります。
【なぜ】
何かを考え判断する時に必要なのは,自分自身の考え方です。とりわけ,自分が何を基準として人や物事に対峙しているのか,考えたことがありますか。私はあまり考えずにきました。手先の工夫が自分の考えぐらいにしか感じていませんでした。
しかし,自分の考え方をもっていないと,ことある度に人や物など何かに頼り,指導のことも自分自身のことさえも「○○頼み」になりがちです。これではいつまでたっても「自分がこの仕事をやっている」という実感がもてず,楽しくありませんね。
こんなとき「基準」をもっていると,その基準に照らし合わせて考えることができます。すると,考えることが楽になります。指導もそして少し大げさですが,生き方も目ざすところが明確になり考えやすくなるのです。
まずは自分の「基準」をもつことから始めましょう。
【方法】
これまで自分が何を基準として,物事を判断してきたのかを振り返ってみましょう。そこには何らかの自分なりの基準をもって判断し進んできたはずです。
例えば「今日は何を食べようか。」「どちらの服を買おうか。」など,身近なことから考えます。考え方の基準は自分にとっての心地よさになっていませんか。好きという言葉でも表せるでしょう。誰でも自分が気持ちよいことを無意識のうちに基準として選択していると考えます。
このことから指導における考え方の基準は,子どもにとっての心地よさや気持ちよさ「しあわせ」と考えるのです。
ここからが肝心なところです。
学校における「しあわせ」とは何かについて考えると,それは一つではないと思うのです。というのは指導におけるしあわせとは,一人一人の子どもによっても,場面によってもさまざまな形があると考えるからです。
例えば喧嘩の場面。少なくとも二人の子どものしあわせを考えます。どちらの子どもにも言い分もあり,改善点もあります。どちらの子どもにも今後の友達関係に生きる指導が必要です。二人に対して「喧嘩するのはいけません。」では指導とは言えないのです。「しあわせ」を基準に指導すると,一人一人の過ちを明確にして自己を振り返らせることができます。さらに改善点も当然違いますから,それぞれに適切な指導をすることができるのです。
喧嘩は一例です。学校生活は授業を核に,さまざまな「場面」があります。場面ごとに「しあわせの在り方」は違うのです。
しあわせの在り方の違いを意識して取り組めば,「今」「この子どもにとってしあわせとは何か」を考えやすくなります。現状においてどのように解決すればこの子どもはしあわせになるのか,何を指導したら今後に生きるしあわせか。内容と方法を場面別かつ個別に考えるのです。方法一つにしても声かけ程度でよいか,じっくり話す方がよいか,自己解決を見守るかなどさまざまです。
指導は子どもの実態を鑑みて考えます。ここでの実態とはこの子どもの性格や友達とのかかわり方,理解力,そして家庭環境等,この子どもを取り巻く人・もの・ことすべてを網羅し,多面的・多角的にとらえた姿をさします。
「何を」「どうすれば」心地よいと感じるのかを考えればよいのです。対象は常に「この子ども」一人なのです。
もう少し具体的に,忘れ物を例に考えましょう。
「筆箱を忘れました。」とAさんが言ってきました。忘れたら必ず先生に言うという約束をしているからです。まずは「忘れてきたのはよくないよ。でも約束を守ってよく言ってきたね。」と声をかけますね。そして忘れてきた理由を考えます。理由は多々あります。詳細は既述の項を参考にしてください。
なぜ忘れてきたのかを必ず対話を通して見つけていきます。
Aさん自身の問題なのか。家庭の問題なのか。先生自身が次の日の予定を伝えていなかったなど指導が問題なのか。ここを明確にしていき解決策を支援します。単純に『忘れた。』『だめだね。次は忘れないように。』の対応では指導とは言えません。なぜならこの対応では,子ども自身をしあわせにしていないからです。
この場面では,この子どもの忘れ物をどのようになくしていくことができるのかまで考えることが「子どもにとってのしあわせ」と考えるからです。
そのためには忘れた理由を明確にし,なぜ忘れたのかを子どもに示して気づかせます。それによって子ども自身は自分の生活を見直し,自分でできる範囲の問題は解決することができるのです。
そして,子どもが自分では解決できない家庭の問題は,家庭と連携して担任が解決していきます。さらに担任は学級での連絡方法を見直し,改善を図りましょう。こうして忘れ物をしないという解決策を見出すことができるのです。
このように,自分なりの考え方の「基準」を見つけて指導に取り組みましょう。