職場の人間関係をスムーズにするためにはどのような心がけが大切ですか。
【答え】
頭を低くして生活してみましょう。
【なぜ】【方法】
子どもと違い大人は自分を変えることが難しい。人間関係は大人にとって本当に難しい問題ですね。
私も苦労してきました。私は自分の気持ちをストレートに出し過ぎて誤解されることも多く,わかっていただけるまでに約3年はかかっていました。その期間は本当につらいものでした。悩む気持ちは痛いほどよくわかります。
さて,自分を振り返ると共に,人間関係の上手な方々を観察してみるのはどうでしょう。私の周りにも,誰からも好かれ頼りにされる方がいらっしゃいます。
若い頃からかれこれ30年のお付き合いになります。その方は「自分は人が好きだから」が口癖です。ご自分の考えはきちんともっていらっしゃいますが,押しつけることはありません。たとえ考えが全く違う方の言葉にも耳を傾けます。まずは受け止めるのです。
自分と考えが違うと,つい反論したくなります。しかしこの方はまずは聞く。途中で口をはさむことはありません。自分の考えを話す時は,柔らかい口調で明るく話します。そのころの私は,違う考えですと,攻めるように強い口調で追い込むように話してしまっていましたので,その方の丁寧な言葉遣いや口調に,はっとしたことを覚えています。
どのような考えの方に対しても,敬意をもって向き合うという真摯な心がぐっと伝わってきました。
まずは,自分が受け止めること。受容と共感,まさに子どもたちに日々指導していることなのだと気づきました。
このような体験から,人間関係をスムーズにしていくには,謙虚とは違う,頭を低くすることが大切なのだと考えます。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』とは,よく言い当てていると思います。
私たち教師の多くは昨日まで学生,今日から「先生」と一気に立場が逆転します。中身は何も変わっていないのに呼び方が変わるだけで,自分が成長したかのようにさえ思えてしまうのです。怖いことです。
どんなに頑張っても1年や2年で人間としての成長は望めません。仕事を通して仕事力も人間力もついてくると考えるからです。人間の成長は決して年齢ではないと考えますが,それでも5年ぐらいしてようやく,仕事も周りの人に関しても見えてくるのではと感じています。
子どもに対しても保護者に対しても,そして,同僚に対しても「自分を取り巻く人々はみな自分を育ててくれる人」と考え,頭を低くして受け止めましょう。文句も言い換えれば指導の一画です。愚痴も悪口も言い換えれば「そういう人にはならないようにしよう」と捉えられる反面教師。自分の受け止め方で,いかようにも自分の力となってくれるのです。
いかに,自分がしっかりと考えをもって子どもに向き合っていても,一人の力などさほどでもありませんね。生涯学びと言われるほど,人の成長にゴールはないのです。ですから,頭を低くしていないと常に相手を跳ね飛ばし,自分以外は見えない人間になってしまいます。あれはおかしい,あれは間違っているそんな見方や考え方,そして判断は他をみるからこそ得られるのです。
頭を低くしていると,いろいろなものやこと,人を自分の中に受け取ることができます。それによって自分の見方や考え方,判断の範疇が広がります。
明らかに間違っていることをいう人もいます。妬み嫉み嫉妬を持ち歩いているのかと思えるほどの方もいます。人は不完全で少しでも完全に近づこうと日々それぞれの思いをもって,歩んでいるのです。さまざまな思いの人がいるからこそ,互いに人は成長できるのです。
また,見方を変えると,頭を低くしていると,嫌なことは頭の上を通り過ぎてくれます。不必要に頭をあげていると,嫌なことにまともにぶつかってしまいます。それなら頭を低くして,嫌なことは避け,自分にとって種や実となる,人を謙虚に受け止めることの方がずっと素晴らしいと考えるのです。
すすんで挨拶,明るい笑顔。頭を低くして苦手な相手でも「そうですかあ」。「あなたの考えはそういうことなのですね。」と聞いておきましょう。時間はかかりますが,ほんの少しでもわかり合える部分が見えてくると考えます。