最近授業中の子どもたちから緊張感が感じられません。気持ちが緩んできているのではと危機感を覚えます。
【答え】
指導時の立ち位置を変えてみましょう。
【なぜ】
ある研修でのことです。「先生方は指導する時,どこに立っていますか。」とお聞きしました。すると多くの方が「黒板の前です。え,そんなこと意識したことありません。」と当然という笑顔で答えてくださいました。
「なぜいつも同じ位置ですか。」と聞き返すと,「子どもは黒板に向かって座っているのですから,立ち位置は黒板前だと思うのですが。」とけげんそうな表情。「そうすると話す時,身近にいる子どもはいつも同じ子どもですね。」と返すと「えっ」という表情。立ち位置の大切さには,気づいていらっしゃらないようでした。立ち位置のもつ意味を考えてみましょう。
いつも同じ立ち位置で指導していると,近くにいる子どもは常に同じ子どもです。その子どもたちは先生のすぐそばで学習していますから,いい意味で緊張し,集中しています。
しかし少し離れた位置の子どもたち,特に後方や教室の両端に座っている子どもたちは,先生からの距離が遠いため,緊張感はなく自由な気分に浸りやすくなっています。すると自分の世界に入りやすく,話を聞くことへの意識も低くなります。大事なことを聴き逃してしまい,大きく学習から離れていきがちです。学級の子どもたち全員に力をつけようと取り組んでいても,立ち位置ひとつで子どもにつく力に差ができてしまうのです。
【方法】
一時間の中で立ち位置を変化させることから始めてみましょう。課題の把握や学習の初めは黒板前。子どもたちのつぶやきを取り上げるときは子どもの中に入り,つぶやく子どものそばに移動します。なかなか学習に向かえない子どものそばにも移動して,その子どものそばで他の子どものつぶやきを取り上げその子どもに返します。
これらは一例です。一つの授業で1・2回でよいのです。前方,後方だけでなく時には,教室の中央に立ってみましょう。話す時に「ここで話しますよ。」と手を挙げて位置を示し,子どもたちが聴く態勢になっているかを確認してから話しましょう。集中力も高まります。そして,慣れてくればこの支援は必要ありません。
立ち位置を変えると一人一人がもっとよく見えてきます。子どもにとって先生が近い存在となりつぶやきが増え,授業が変わってきます。立ち位置を変えることは,授業や指導の充実に結びつく重要なことなのです。