☆コラム「返事がない...」 指導の工夫 いつもと視点を変えて
3年生の担任の先生からのご質問です。
「これは○○なのね。」と話しかけても「...」子どもからは何の反応もありません。その表情は,自分ではない,誰かだろうと知らん顔。すべての子どもたちに話しかけているにもかかわらず,子どもからは何の返事がない。これはどういうこと? と考え込んでしまいました。
これまで「話し手を見て聴く」と指導していますが,話し手を見ることはなく,聞き流している感じです。
そこで「ねえ,先生はみんなに話しかけたのよ。だから,一人一人全員が返事をすること。それが人と生活していくときに大事なことなの」と指導しました。聴く力の指導をしていてもなかなか力がつかないのです。
この経験私にもあります。子どもの実態によって,聴く力のつき方にもかかる時間にも違いがあります。子どもの実態は,地域や学年学級によって大きく違うからです。もちろん育てることでどの子どもにも聴く力はついてきます。しかし,子どもにはじっくり,のんびり,わさわさ,などさまざまな実態があります。
私が経験した子どもたちは,何でも楽しもうとする前向きさをもち,快活な子どもたちでしたが,じっくり物事に向き合うことが苦手でした。最後まで聴く,やっていることをやめて聴くなどのことは別な世界のようでした。
そこで,正攻法では無理と判断し,子どものよさを生かしたゲーム感覚での指導に切り替えてみました。こんな感じです。
「返事がなあい」と抑揚をつけて言うことにしました。子どもたちはゲーム感覚で受け止め,面白がって口真似をしました。子どもの中にも「返事がなあい」が「流行」となり,互いに言葉をかけ合うことが聴き合うことに繋がっていきました。
文字通りありとあらゆる場面で「返事がなあい」を繰り返していくと,今まで反応の無かった子どもたちから自然に応える声が増えてきました。そして「誰かではなく自分が聴いて自分も返事をする。」という意識が育ち,小さなつぶやきにも応える習慣がついてきました。
うれしいことに学習や指導に対しても,自分のことという意識が育ち,教師と子どもたちとの双方向での伝え合いが増え,結果的に聴く力をつけることへとつながっていきました。
こんな些細なことと思われるかもしれませんが,指導とはさもない些細なことへの気づきや積み重ねが大きな力をつけることへと結びつくのです。授業は教師や子ども,子ども同士双方向の伝え合い。投げかけに応える,応え合うことが授業なのです。聴く力等,力をつけるためには,子どもの実態に即して指導方法の視点を変える,この発想の転換が教師には必要だと改めて強く感じます。