多くの制約の中で子どもたちはいつもと違った様子です。この時期に子どもが求める先生とは,どのような先生でしょうか。
【答え】
一緒にいて安心できる先生。ちゃんと授業をしてくれるけれど,無理強いはしない先生。心と学びの両方を満たしてくれる先生です。
【なぜ】・【内容】
○一緒にいて安心できる先生。
明るく元気のよい先生。子どもが求める先生の姿です。しかしこの時期は,落ち着きや穏やかさも必要なのです。なぜなら,取り巻く環境が不安定な現在の状況。子どもたちの不安感を包み,安定した心と時間を過ごすことができるようにすることが重要だからです。
そして,不安になりがちな気持ちを前向きに転換してくれる先生であることも重要です。それには,子どもを丸ごと肯定的に受け止めることです。その行動やその背景にある環境,心情,性格すべてを肯定的に捉えましょう。
子どもは自分のマイナスな面に気付いているものです。そこを突かれると普段なら素直に受け止める指導も,この時期には逆方向に向いてしまうことも考えられます。子どもの気持ちが不安定で受け止める余裕がないのです。教師の思い込みで子どもの行動を曲げて捉えることは,子どもを否定することにつながります。ですから意識していつも以上によさを見取り,褒めて育てましょう。
不思議なことに,肯定的に捉えると,かける言葉も醸し出す雰囲気も温かなものとして子どもに伝わります。すると子どもは安心し,友達同士の関係も和らぎます。先生との信頼関係も生まれてきます。指導も受け止めるようになり,よい方向へとつながっていくのです。子ども同士の心も温かく受容・共感の学級づくりもできるようになってくるのです。
子どもも先生も誰もが大変な今。だからこそ,心のもち方一つでお互いの気持ちが和らぎ温かいつながりが生まれる,人の力が試されているようにさえ感じます。目の前にいる私たち教師が,子どもの心や行動,考え方をもつくっていることを再認識しましょう。
○ちゃんと授業をしてくれるけれど,無理強いはしない先生。
日頃でも集中できる時間は10分です。一単位時間を三分割して,心のつながりの時間,学習へのはじまり,そして活動の変化を組み合わせ,この時期の授業づくりを考えます。アクション,チェンジ,サウンド。これは赤ちゃんの遊びにおける三条件と聴きました。まさにこのことが授業に関連していると考えます。
アクション。まずは動く。既習の学習を基に新しいことに取り組みます。次にそのことを広げ深めていきます。そしてその中に立つ,座る,声を出すなど多様な行動・活動を取り入れます。まさに「意味ある変化」が重要なポイントなのです。
暑さなどの自然環境も含め,思いもかけずさまざまな不安に囲まれた日々を過ごしています。その中で楽しさや満足を考え工夫して過ごす学校生活を生み出していきましょう。
そして,私も常に自分に言い聞かせているさらに肝心なことをご紹介します。
日頃の指導では誰もがわかる,できると実感できる「満足」を追究しています。当然,子どもたちにそれを求めています。しかし今の時期は,自分自身の取り組みは今までどおり100%でも,子どもへの要求は60%にしています。上記のように今の状況下では,その日の子どもがおかれている心情や環境は推し測ることさえ難しいと感じています。ですから,できなくてよいのではなく,少し気持ちの基準を下げてこのぐらいならよいとゆとりをもって向き合うことにしています。なぜ60%なのか。それは次のように考えるからです。
子どもたちによく言っている指導の一つに,「本番は一回。その時に出せる力は,プロでも練習の時の60%。だから練習では120%を目指しましょう」があります。どんなに練習を重ねていても本番には魔物が住むといわれるほど,緊張だけでなくさまざまな要因により,日頃の実力は出しにくいものです。今は知識の理解も技能の追究も,十分に保障できてはいないのが現状です。ですから60%と考えているのです。
研究に裏付けられた指導への責任と子どもへの気持ちのゆとり,双方のバランスを取りながら,今を乗り切りたいと考えます。