読解力をつけることが課題となっていますが,入門期の子どもにはまだ無理ではないかと感じます。入門期の子どもに読解力をつける必要がありますか。
【答え】
入門期だからこそ,意識して指導する必要があります。「考える習慣」をつけましょう。高学年と同じ考える力をつけようと思ってはいけません。入門期だからこそ,考える力を培うための基礎ともなるべき力をつける必要があります。それが「考える習慣」です。
【なぜ】
ものの形や色,手触り,鳴き声,音など教師が視点を示して問いかけると,子どもは視角や聴覚に訴えられた内容に気付くことはできます。しかし,その気付きから「自分はそのことをこのように考える」という自己の思考をもつことは,ほとんどといってよいほどありません。教師も子どもも,見えたこと聞こえたことの事実を捉えた段階で,満足してしまっています。これでは,考える力は育ちません。自分の考えをもつ習慣がないのです。読解力とは,大きく捉えると「考える力をつけること」です。見たとき聞いたとき日常的に,そこから自分の考えをもつことができるよう「考える習慣をつけること」が,入門期にこそ「つけておかなければならない力」なのです。
【方法】
まず,見る視点を指導しましょう。色,形,手触り,音,上から見る,下から見る,ぐるっと回してみる,手に持って重さを感じる,なでて手触り,においを嗅ぐ,まさに,諸感覚を使って対象物とふれ合う体験を日常的に積み重ねましょう。
次に,諸感覚を通して感じたこと,見えたこと,聞こえたことを伝えるときには,できるだけ自分の気持ちをつけ加えて話すよう約束します。そして自分の気持ちとはどのようなことか,それをどのような言葉で表現するのかを指導します。なぜなら,子どもは難しいことを聴かれているのかと思ったり,それをどのように伝えるのかが,わからなかったりするからです。
例えば,「大きなコップだね。持ってみてAちゃんどう思った?」と問いかけます。「重かった」「おもしろい形だ」「ほしいな」など,短い言葉でよいのです。この活動の積み重ねによって,見えたことなどの事実だけでなく,そこから「自分はそのことをどのように感じるのか」,考える習慣がついてくるのです。更に,感じたことや気づいたことを「どのように表現すれば伝わるのか」適切な言葉や語彙を増やすことにもつながります。「考える力」とそれを「表現する力」の基礎が育ちます。「黄色いコップが一つあります」「はい,そうですね」だけのやり取りを続けていたのでは,考える力を育てることはできないのです。