学校生活に慣れてきましたが,朝の会や学習の準備,当番活動,帰りの支度など決まった活動でも教師の指示待ちで生活していることが気になります。1年生はまだこのような状態でよいのでしょうか。
【答え】
一日の流れや活動において「いつ何をどのように進めていくのか」「見通しをもつ力」を育てます。まず1年生では,「見通しをもつ習慣」をつけ,具体的な場面でシミュレーションすることを通して「見通しをもつ力」を育てることにつなげましょう。
【なぜ】
「次はこれをします。○○を用意しましょう。」
これまで「いつ,何をするのか。」その都度教師が支持をし,まずは教師が学校生活の在り方を指導するための指示,指導をしてきました。
ですから子どもたちは「次は何をするのか」「そのために,いつ,何を準備するのか」を考える必要もなく,言われた時に言われた行動をする生活をしてきています。
もしこのまま過ごしていると,いつまでも教師の声かけがなければ「何もできない,何もしない」,自分で考えることもなく「言われたことを言われたままにするだけの子ども」になってしまいます。
子ども自身が見通しをもって行動する習慣や力をつければ,次の行動をシミュレーションし,自分たちで主体的に行動することができるのです。十分に力がついてくると,課題や問題を事前に把握でき,よりよい解決の手だてを考えることもできます。
「次は何をするのかを確認する」「そのためには,いつ,何を準備したらよいかを考える」自分で考える力も培われます。
この力を一気につけることは,1年生では発達段階からも適期とは言えません。
そこで,見通しをもつ習慣を具体的な場面を通して育てます。多くの子どもは何事にも「自分たちでやってみたい」という気持をもっています。子どもが主体的に動こうとする機会を逃さず,指導に取り組みましょう。
【方法】
まずは,教師からの声かけを子どもへの問いかけにかえましょう。
「次は○○をします。?□を準備しましょう。」から「次は何をするのかな。そのためには何を準備したらよいですか。」シミュレーションする,考える場面が増え,自分でシミュレーションする習慣がついてきます。この積み重ねを通して,子どもたちは,先の見通しをもつ大切さに気づき,意識して行動するように育っていきます。
そして「係」を作り,教師の行っていた声かけを子どもに体験させましょう。自分たちで生活をつくる楽しさを味わいながら,見通しをもつ意味や,それによって自分たちで行動できる楽しさも知り,力をつけていきます。
声かけの場面として,朝の会を始める,学習の準備をする,給食の準備や片づけ,掃除当番を始める合図や終りの挨拶,帰りの会など,学級の実態にそって取り組みます。
始めは決まった場面での声かけですが,活動を積み重ねる中で子どもたちが声かけの必要な場面に気づき,活動を広げていきます。係と全員とで取り組むからこそ,気づきも増えてきます。係の子どもだけが一方的に知らせる活動にならないよう支援を続けます。
係の例として「時計屋さん」があります。一日の流れの中で,時間の見通しが必要なときに活動する係です。子どもたちは,喜んでこの係に取り組みます。
係の声かけに,全員が「ありがとう」と簡単な言葉で返事をするなど,共に活動をつくるという意識を育てながら取り組みます。以下は,実例です。
例1朝の登校時
時計屋さん 「もうすぐ朝の会を始めます。朝の支度をして,長い針が5までに座りましょう。」
学級全員 「ありがとう。」
例2休み時間の始まり
時計屋さん 「3時間目は算数です。用意はできましたか。長い針が7で帰ってきましょう。」
学級全員 「ありがとう。できていますよ。」
例3給食の時間
時計屋さん 「あと10分でごちそうさまです。デザートをまだ食べていない人は,食べてください。」
学級全員 「わかりました。ありがとう。」
<指導のポイント>
(1) 声かけの内容や時刻を指導支援すること
「□?を伝えましょう。どのように伝えたらわかりやすいかな。」「今○○ですよ。□?について,お知らせを忘れていませんか。」など,声かけの内容の指導や時刻を促す支援が必要です。子どもに任せたままでは,力は育ちません。
(2) 声かけは二人で行うこと
「何を知らせるのか」知らせる内容や知らせる時刻を二人で相談しながら,活動を進めることができます。教師の指導や支援を受けながら,少しずつ子どもどうしでも工夫できるように進めます。一人では負担が大きくなります。二人以上では「遊び」になってしまいます。