指導しても日常に力が結びついていきません。何が足りないのか悩んでいます。
【答え】
学習と日常とのつながりを子どもの姿で想像して,指導内容を見直しましょう。
【なぜ】
例えば,子どもたちはこれから始まる「秋みつけ」を通して,自然の不思議や楽しさ,豊かさなどを感じ,気づき,考える学習をすることでしょう。
学習したことがきっかけで,自然に関心をもち自分なりに学びが広がる子どももいます。しかし中には,せっかく自然の豊かさを学びながら,それはそれ,これはこれと学習と日常とが別物になっている子どももいます。花や木々の変化に気づき,季節を感じたら,身の回りの生きものや物への接し方も変わっていくはずです。
大人にとっては学習したことを身の回りの花や木々,季節の特徴や物への接し方につなげることは自然で容易であっても,子どもにとってはその気づきや意識は十分ではありません。特に興味のある子どもは別として,学習時間が終われば学習した内容は「お仕舞い」です。ですから学習がどのように日常につながるのかに気づかせたり,具体的に行動を指導・支援したりすることが必要だと考えます。
先生が「これ学習したね。」「あの学習とつながるね。」と,指導する内容をつなげていく意識をもち,声をかけるだけでも「ああそうか。」と,その後の行動が変わっていきます。
また,何を指導したらよいのかがつかめないときには,子どもたちに「これからどうすることが大切かな。」などと聴き返す活動を通して目的を明確にしていきましょう。
例えば水やり。花を育てるときには水やりが重要です。「水はご飯。光や土はおかずかな。」とつぶやいた子どもがいました。「花にも水をあげ,陽を当て,土づくりを大切にするのです。」と学習をすると,子どもたちはこぞって水やりに励みます。雨が降って土が乾いていなくても水をあげてしまいます。花も自分たちと同じという発想はあまりなく,それよりも水をあげるということが優先してしまうのです。それが子どもです。人も水をたくさん飲みたいときと少しでよいときとがあります。自分ならどうするかを想像させて,水やりの判断ができるようにしていきます。大人にとっては当然のことも子どもにとっては全く想像もしない世界なのです。
様子を見て判断する,これが学習したことを日常生活につなげるところなのです。この気づきがないために子どもは水をあげ過ぎたり,忘れたりしてしまうのです。
花の様子をよく観察して,土をみる。水をあげるかどうか考える,もしあげるならどれくらいあげるかを判断する,そこまで見通して指導する必要があるのです。
残念な指導を見かけました。ある先生が「水をあげるのを忘れて自分の花が枯れたら,そこで水やりについて気づくからそのままにしておけばよいですよ。」と。一見子どもの気づきや思考を大切にしているように見受けますが,違います。花を育てその成長から得られる喜びやその命を育てることを通して,自分以外のものへの命の大切さも学習しているのです。ですから枯らさないためにはどうしたらよいかを考えさせ,どの子どもにも花を咲かせることが重要な学習だと考えます。指導と共に支援という言葉があるのはそういうことです。
指導書に書いてある内容だけでなく,力をつけるためには何を指導するのかを考える,それが重要なのです。
学習と日常とのつながりを意識して子どもの行動を想像すると,指導の先が見えてきます。つながりの部分に気づいて指導しましょう。