卒業式や入学式など,練習を重ねて学校行事に参加しても本番はうまくいきません。「残念な参加学年」にしないための指導について知りたいです。
【答え】
「子どもの困り感」を基盤として「つめ」の指導を考えます。
【なぜ】
なぜ指導してもうまくいかないのでしょう。なぜなら,指導と子どもの困り感とにずれがあるからです。
「これを教えておかなければ」と力を入れて取り組みます。しかし,その考えの基盤は「教師側」であり,内容も方法も教師の側からのみ考えられたものになっているからです。
例えば入学式で「お祝いの歌を歌う」場合です。
歌い方や姿勢などの指導をして,繰り返し練習もします。子どもは歌うことはできるようになり,自信をもって歌えます。
しかし,当日の流れを思い浮かべると,歌うためにはこれに伴うその他の動きがあります。しかもそれらは連動した動きです。まず歌うためには席から立ちますね。立つためには座り方が大きく影響します。座り方の指導がないと,椅子の音がガタガタしたり,ざわついたりしてしまいます。
子どもが立つときの姿を見ると,多くの子どもは椅子に深く座り背もたれに寄りかかっています。楽だからです。そのため,みんなと一緒に立とうとしても一度で立ち上がれなかったり,立ってもひざの後ろが椅子に当たったりして,それを直そうとしていて,揃わない。立ちやすい座り方がわかっていないため,思うように行動できないのです。椅子に深く腰掛けてしまうと,座面の前に座りなおしてから立つことになります。足の裏が床についていない場合も同じです。「立ちやすい座り方」の指導が必要なのです。
音をさせずに静かに立つことは,大人にとっては当然のことでも,子どもにとっては立つための座り方もその方法があることすら知らないのです。これが子どもの困り感なのです。
さらに歌い終わると,「座る」など次の動きへつなげる「連動した動き」があります。どのタイミングで立つの? 歌い終わったらいつ座るの? と,次の動きへのタイミングの指導が必要です。しかし「はい座って」など教師の言葉かけだけに終始していると,「言われたら動く子ども」にならざるを得ません。いつまでたっても「つなぎのタイミング」を身につけることはできないため,自分で動ける子どもになることができないのです。子どもは,こんなところで困っているのです。
子ども一人一人の理解や気づきには違いがあります。子ども同士で全員同じタイミングで動くことができるようにするには,このように小さな動きのつなぎを具体的に指導しておくことも必要なのです。
そして,この連動した動きは繰り返し練習することで力がつき,自信をもって行動することができるようになります。説明はしても,その練習の回数が少ないと本番で力を発揮することはできないため,練習したのに残念な結果になってしまうのです。
【方法】
困り感への具体的な指導
○音を立てずにそろって 立つための指導
⇒ 座り方を指導します。
指導は「足の裏が床についた状態で座る」です。座り方とは,お尻の位置や足の置き方がポイントです。「椅子の背に寄りかからないで,姿勢をよくします。」と声をかけていても,一人一人身長や体型には違いがあります。したがって足の裏が床につくためには,お尻の位置も違うのです。
ですから「すぐ立てる座り方は,足の裏全体を床に着けて座ります。」と指導します。この指導では足の裏全体がつくこと」ここが指導の鍵です。子どもはつま先がついているだけで,足は床についていると思い込んでいます。立つためには足全体に体重をかけて立つことに子どもは気づいてはいないのです。
椅子の前後の間隔も空けておきましょう。立った時にひざの裏に椅子が当たって,音がするのを防ぐことができます。座り方の指導と椅子の並べ方を見直し「音を立てずに,そろって立てる」指導をしましょう。
○連動した動きが子どもたちだけで,できるようにするための指導
『立つ→ 活動する→ 座る』 この動きのタイミングを取り出して数回練習します。
次に全体の流れを繰り返し練習します。うまくできないところは取り出して練習しますが,全体の流れを子どもたちがつかむことにより,できない部分への意識や完成度が上がり,できるようになったという満足が実感できるのです。
子どもは自分が動いて,初めて理解が始まります。そして動きを繰り返し行うことで「そうなんだ」と行動に移すことができるようになります。
したがって具体的な動きを伴い,かつ繰り返し練習することでどの子どもにも理解し行動する力がついてくるのです。このように子どもの困り感に立って指導を考えることが重要です。