入学式でお祝いの歌を歌います。気持ちが伝わる歌にするための指導について考えています。
【答え】
曲の特徴,特にリズムに焦点を当てて指導を考えます。
【なぜ】
曲には,弾んだ,なめらかな,元気になる,落ち着いたなどさまざまな特徴があります。これらを決める要素はリズムです。特に付点のリズムが指導の鍵となります。選ぶ曲はさまざまですが,入学のお祝いには弾んだ明るさをもつ曲が使われることが多くみられます。この場合は,軽やかな表現にすることで明るさや楽しさが伝わります。もちろん長調や短調の違いはありますが,明るく弾んだリズムが曲の気分を表現し,気持ちを伝えることに大きな役割を果たします。特に付点のリズムには,より気分を盛り上げる効果があります。
しかし,付点のリズムの表現は子どもには難しく,軽さが伝わりにくいものです。特に「♪タンタタンタタンタタン」のように,付点のリズムが連続する曲では,リズムの刻みが難しく付点がうまく表現できないため,リズムが曖昧になり少し重い感じになりがちです。曲を聴いているだけではリズムの体得は難しいのです。
身体表現を取り入れて,体を通して具体的にリズムを捉えられるように指導することで,軽やかなリズムを表現する力がついてきます。
また,歌詞の発音にも大きな役割があります。言葉がはっきり聞こえることは大切ですが,大きな声で歌うことでは解決しません。声の大きさだけに頼っても発音は逆に曖昧になりがちです。闇雲に口を開けただけでは,一語ずつの発音がこもってしまい言葉にした時には曖昧になりがちです。
子どもは一語ずつ口を開け直すことができず,大きな声で歌ってと指導すると口を大きく開けたままで言葉を発しようとしています。歌は音程がつきますから,さらに言葉はくぐもり,聞いている人に何を言っているのか歌詞も伝わりにくいものです。
私は「大きな声で元気よく歌えばいいのよ。」という指導を耳にすると心配になります。なぜなら入学へのお祝いの場は,この学校で一年間学習してくるとこのように表現する力がついてきますという姿を,入学してきた子どもや保護者の方に伝える場です。「誰のために」「何を伝える」か,相手意識・目的意識をもって指導に取り組みましょう。
【方法】
リズムを打つときには次のように打ち方を指導します。
付点のリズムは,特に利き手の指先を反対側の手のひらに受けて打ちます。利き手が右ならば,左手の手のひらを上に向け,右の指先を受ける形にして,リズムを打ちます。両手を合わせる打ち方ではリズムの刻みが正確には打ちにくいのです。刻みとは細かくリズムを打つことです。細かい動きは素早く,しかも同じ調子で打つため,手や指の動きが細かく正確に動けることが必要です。手より指先を使うことでこの動きが容易になります。
また指の動きは,空中では刻みがわかりにくいため,受け手をつくるとリズムの刻みが実感できます。必ず受け手と指先をセットにして行います。
歌詞の発音は,口形を指導しましょう。国語科での学習を想起させると,指導がより効果的になります。
口を縦に開くこと。一語ずつ口を開けなおすこと。言葉の始まりと終わりを丁寧に発音することを指導します。言葉の始まりの発音ははっきりと,終わりは丁寧に収めます。
自分の目より上の方に声を出すことを指導すると声も明るくなります。そして「歌う声と話す声とは違う」ことの指導をもう一度しておきましょう。入学してくる新しい一年生に二年生としての歌声を聴かせたいという気持ちが生まれ,歌声への意識も高まります。
リズムを意識して,明るく軽やかな表現を目指しましょう。