授業時間の確保や保障が難しくなっています。今後「何を」「どのように」工夫することが重要でしょうか。
【答え】
指導計画を見直します。資質・能力の育成を視点にします。
①題材・単元を絞りましょう。学校の研究などと関連させて学年で焦点化します。
②時間数より,資質・能力指導する内容を核に考えます。時間をかけることに縛られていませんか。時間ではなく資質・能力を育成することが重要です。指導書の計画に頼り過ぎたり惑わされたりしていませんか。指導書は参考書です。その意図を理解して学校の実態に即した指導計画を考える,その参考として有効に活用しましょう。
③教科内容の横断や資質・能力の横断を工夫すると,指導の内容が充実し時間を生み出すことにもつながります。
④計画は,年度末まではざっくりと,一か月単位の計画を詳細に立てましょう。
⑤教材の共有化を図ります。
【なぜ】・【方法】
具体的に説明していきます。
①題材・単元を絞りましょう。
教科書に示されている単元は,学習指導要領の内容を指導するうえでの例として示されたものです。ですから,そのまますべてを取り組むと,当然時間が足りなくなります。参考にしながら,学校の特色や子どもの実態に即して指導計画を立てることは周知のことです。
しかし,多くの学校では,教科書会社の指導計画をそのまま使っていることも事実です。資料としてたたき台にして,それを学校の地域性や教育の特色,子どもの実態に即して作り直すことで「生きた指導計画」とする ことができるのです。今の状況は時間も環境も条件も制約の中での「授業づくり」です。いつも以上に「工夫」が授業づくりの重要ポイントなのです。
このような視点で見直すと,重点化する単元が見えてきます。教科横断等単元を焦点化することにより,時間をかけて取り組むのはどの単元か,単元の軽重が見えてくるのです。さらに,子どもたちの実態を考え,単元を整理していきます。これが「学校の指導計画」なのです。
教科書は全国どの地域にも使っていただけるよう,一般化されたものであることを再認識して,指導に役立てる活用をしましょう。
②扱う時間数を学校の児童の実態で考えましょう。
①で述べたように,単元を整理していくと必要時間数が見えてきます。いつ休校になるかわからない状況の中です。重要単元を先に取り組むなど時間の使い方の工夫が大切です,既述の原稿にある私の仕事の自分への合い言葉を思い出します。「短期決戦」「工夫の山」「結果を出す」今まさにこれが取り組みの「合い言葉」と考えます。
③教科内容の横断や資質・能力の横断を工夫しましょう。
私が実践して気付いたのですが,小学校の担任の先生方でしたら無意識のうちに実践していることだと思い ます。ぜひご自分の実践を振り返り,見つけてください。
④計画は年度末まではざっくりと,一か月単位の計画を詳細に立てましょう。
現状では今後もいつ,そして急に,休校になるかも知れません。大まかな見通しの中で,指導計画はその学年で育成すべき内容を網羅しつつも見通しとして計画を立てます。
見通しとして二週単位で計画を考えます。週の指導計画案の書き方で既述したように,一単元に必要な時間数は教科によりますが,二週単位だと見通しが立ちやすいです。時間には限りがあります。明日から休校となっても大丈夫なように一週間,二週間など短期で区切りが付けられるような時間のとり方を工夫しましょう。
⑤教材の共有化を図ります。
教材を共有すると資質・能力育成にゆとりができます。実態に即して時間のかけ方が工夫できるからです。
教材の共有とは,一教材で複数の資質・能力を育成することに使うという考え方です。これまでの教材の扱い方は,一つの資質能力に対して一つの教材でした。しかし,教材のもつ力を多方向から分析してみると教材にはいくつもの内容が含まれていることに気付きます。
例えば国語科『三年とうげ』は,古くから言い伝えられた外国の文化を題材としています。その国の文化を知ることや国を知る手がかり,日本の国の文化や歴史との比較に気付くこともできます。
また,特徴的な語り口調でリズムにのって読み進め,表現の世界を広げるおもしろさもあります。楽しんで音読に親しみながら内容を理解していくこともできます。さらに,「書くこと」の教材性も含まれています。
このように教材性を生かして,一つの教材で複数の資質・能力の育成に活用することができるのです。