1年生の担任です。時間もなくどのようにしてよいか。この時期にこそ指導しておくことは何ですか。
【答え】
今の状況に合った指導を考えましょう。
【なぜ】
いつも以上に,多様な視点から,子ども一人一人の実態を見取ることが重要です。なぜなら,子どものおかれている環境は,人的にも物的にもその実態に大きな違いがあるからです。例えば学習。家庭で保護者の方などから直接教えられている子どももいます。WEB環境に恵まれて,専門機関等から指導を受けている子どももいます。かたや,学校から出された宿題一つもよくわからない,やる気が起きないなど何もできずに時間だけをやり過ごしてきた子どもも少なくありません。
また,生活においても,規則正しく過ごしている子どももいれば,一日中子どもだけで過ごさざるを得ないため,だらだらとしている子どももいます。したがって,学校が始まり,授業が再開されても,スタートラインに大きな開きがあるのです。そして,この開きは現状のみならず,この先の成長においても大きいと言えるのです。ですから子どもたちそれぞれの実態の違いを見取ることが重要なのです。
【方法】
生活習慣と学習の約束を決めます。
いくつかの内容に絞り,それを繰り返し継続的に指導する,指導方法にシフトします。今年度だけの考え方ですが,何をおいても聴く力はつけていきます。
一年生の時期は,生活面での指導が学習に大きな有用性を発揮します。生活面の成長が学習への充実につながることを意識して指導に取り組みます。したがって学習面での指導は一つだけ「聴く力を育てること」に絞ります。指導は「やっている作業をやめて,話している人を見て聴くこと」これ一つです。
では,基盤となる生活面における指導です。学校の決まりや学級での約束,友達との関係をどのように育てていくかを中心に考えます。「みんなの約束」として指導していきます。
《生活面での約束》
①友達関係を育む。― 順番を守ること
この時期に友達関係と言えば,まず「順番を守ること」です。自分中心の生活を長くしてきてしまったこの状況だからこそ,周りに目を向けることの大切さを指導します。自分も友達の誰もが大切にされることに気付かせ意識させましょう。
以下のような子どもの姿を見かけませんか。
◯ 自分ばかり話して,友達の話を聴かない子ども。
◯ 友達の話をさえぎって,自分が話そうとする子ども。
◯ 「私をみてみて」と,友達や教師との間に体ごと割り込んで自分を主張する子ども。
子どもなら誰もがしている行動。と見逃さずに周りをよくみてみましょう。ほら,じっとこちらを見ながら我慢している子どもがいます。わがままな子,家庭教育が十分でない子,などと思い込まず,誰もが大切であるという心を育てる指導に取り組みましょう。
②友達関係を育む。 ― 「されてうれしいことをする。されて嫌なことをしない。」
思いやりの心を育てます。思いやりについて子どもに訊くと,多くの答えが「困っている人を助けてあげること」答えます。それまでの環境の中で得てきた情報なのでしょう。しかしこのように,「○○してあげる」という気持ちは,人によいことをしたという充実感だけでなく,ややもすると相手に対する優越感を生み出すことになりかねないかと気になります。
幼児期にはよいことをしたという気持ちですが,成長するにしたがって,人に対して上下をつくるようになっていく例も少なくありません。もちろん,無意識ですがそのままにしていると自分の思いや行為は正しい,認められたと感じ,自己中心的になっていくこともあると考えます。「してあげる」のではありません。互いに認め合う,高め合う友達です。人に上下はなく,誰もが大切にされる存在であることを意識して指導します。
③生活面を育てる ― 時間を守ること
私たちの生活は「時間で動いている」という意識,時間枠を指導します。
時間枠は,何をするにも時間を決めて行うという意味です。決められた時間枠の中で,何をどのようにしていくのかを学びます。
この時期の時間の管理は大人の役目です。子どもは時間の意識をもたないで生活しています。しかし,時間を意識して生活することは,人として必須のことです。ですから,時間は自分と社会をつなぎ,人との関わりで使うものであることへの意識を育てます。ただ同じことを指導しても,定着までの時間は一人一人違いがあります。「長い針が7までにはできるようにしようね。」など実態に応じて見極めながら,社会の時間枠に近づけることができるよう指導を重ねます。