☆コラム 手拍子は優れもの! 指導のポイント
音楽の「見えるリズム打ち」には,大事な指導のポイントが二つあります。
一つは「休符」を表現することです。もう一つは,「のばす音」を表現することです。
まず「休符」の表現です。
例えば1年生で指導する七つ打ちリズム。4拍を二つ続け8拍のまとまりを表現する時,最後の1拍は休みにして全体をまとめます。
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ |
タン | タン | タン | タン | タン | タン | タン | ウン |
重要なのは8拍目の休符を1拍として数える指導をすることです。最後の休符を打つことで,リズムのまとまりとなるのです。この休符を打つことを指導していないと,リズムのまとまりを感じ取ることができません。すると音楽のまとまりや言葉のまとまりを捉えることができないため,リズム打ちも単にリズムを打つことだけになってしまうのです。ですから「休符」を意識して指導することが,音楽の見える「リズム打ち」における重要なポイントなのです。
次は,「のばす音」の表現です。
十分に音符の長さ分を表現することが重要です。そのためには「音符の長さを見える化」すること。子どもたちは,短い音の表現と同じ打ち方で表現しますが,そこを捉えて意識化する指導がポイントです。
そのためには音の長さが見えるように,音の長さ分を表す打ち方を工夫します。 拍打ちもリズム打ちも両手を左右に開いて打つことが多いと思いますが,この打ち方だと左右の開き加減が打つたびに曖昧になり,音符の長さを保つことが難しくなります。低学年の子どもが打っているうちにどんどん速くなるのはこれが原因の一つと言えるでしょう。ですから,音符の長さ分を保つための開き方が必要なのです。
例えば,両手を打つと同時にその手を上にあげ,左右に開きます。そして開いたまま下で次の拍やリズムを打ちます。ちょうど両手でハートを描くような感じです。このように打つと,両手を上にあげ下におろすまでの時間の長さで音符の長さを保つことができるのです。大きなハートは長くのばす音,小さいハートは短いけれどのばす音となるのです。この表現方法は私の経験値で言えることですが,低学年から高学年までどの子どもにも簡単に音符の長さを保ち,正確に表現するリズム打ちができるようになります。この打ち方で短い音符との違いを表現することができ,音楽が見える「リズム打ち」ができるのです。
歌詞の言葉の表現方法も,同様です。
例えば「たぬき」。た・ぬ・き・ と,一音のみを打っていませんか。一音のみを打つと音符の長さ分より短くなりがちです。たあ ぬう きい と,母音の長さ分をのばして打ちます。すると音符の長さ分打つことができます。さらに母音分をのばすことで,言葉の音を表現することができます。
歌うことができなくても,歌詞を「リズム打ち」することで,歌っているのと同じ表現をすることができます。観ている子どもにも歌が「見える化」されます。このように「リズム打ち」は,音楽の学習をしている,音楽に親しんでいるという実感が得られ「優れもの」なのです。
方法は多少の違いを恐れずに,子どもたちと一緒に「今,できることを考える」授業づくりに取り組みましょう。
『できないことを数えるよりも,できることを考える』。少し大きな言い方ですが,この考え方や取り組む姿勢は,困難や変化の激しい時代に向かう子どもたちの生きる力となることでしょう。