音楽の授業に困っています。歌うことも鍵盤ハーモニカを吹くこともできません。
【答え】
「手拍子は優れもの!」 音楽の見える「リズム打ち」を活用しましょう。
【なぜ】
何気なく打っている手拍子。これが大変優れものであることに,歌うことができない現在の授業から,改めてその深さに気付きました。音楽科の学習で使う手拍子とは,拍打ちやリズム打ち,指揮の模倣です。
その中で特に「リズム打ち」は,歌うことができない現在の状況で「歌うことの代わり」を成す「優れもの」なのです。なぜなら「リズム打ち」は,「音楽が見える」手拍子だからです。ここでいう「音楽が見えるリズム打ち」は,歌詞の言葉やその抑揚,曲想や曲想の変化までもが見える表現なのです。打ち方に秘密があります。
リズム打ちの指導は.楽曲のリズムを打つことだけと思われています。しかし「リズムを打つこと」と「リズム打ち」とは少しだけその意味が違うと考えます。
「リズムを打つ」とは,リズム遊びを含め,リズムだけを打つことをさします。それに比べて,ここでいう「音楽の見えるリズム打ち」とは,「旋律のある楽曲のリズムを打つこと」と考えています。打ち方を工夫することで,歌詞の言葉の抑揚やニュアンスなどを表現することができるようになり,歌う代わりになるのです。具体的な例は次の通りです。
言葉には音があります。強く発音する部分とそうでない部分とにより,言葉は気持ちや内容を伝えます。これをリズム打ちで表現することができます。
例えば,「ありがとう。」いろいろな言い方がありますね。強弱や速度を変えるだけでも,また,声の高さを変えるだけでも,その意味は変わります。それをリズム打ちで表現してみましょう。
①ありがとう。②ありがとう。③ありがとう。④ありがとう
①は,あにアクセントをおくように少し強く長めに,他は力を抜いて自然に収めるように打ちます。
②は,全体を軽く,同じ音量で指先で打ちます。
③は,子どもが好きな,自己解放型,全体を強く元気よく打ちます。このような比較学習では必ずこの自己解放を取り入れることが指導のポイントです。これを実感することで,他との違いの大きさを実感することができるからです。
④は,全体を音量も力での入れ方もすべてを同じように発音します。いわゆる棒読みのような打ち方です。このように比較して見ると同じ言葉でもそのもつ意味までも違って聞こえます。
【方法】
音楽の見える「リズム打ち」。その打ち方に秘密があります。
手のうち方は,右手の指先をそろえて,左手の手のひらに当てて打ちます。このとき左手は少しだけ「くの字」に曲げると手のひらに右手の指先が当てやすくなります。こうすると指先でリズムを打つため,細かいリズムを刻むことやリズムのもつ微妙な違いも表すことができるのです。
一般的には両手を合わせてパンパンと手拍子のように打っていますね。この打ち方では,音楽を表現するための「リズム打ち」はできません。さらに強弱は打つ強さで,曲趣や曲想はその打ち方を柔らかさなどの加減により多様に変化させることができます。子どもたちは自由に感じ取った音楽を表現しています。子どもたちの表現の工夫の方が豊かにさえ感じます。
このように「リズム打ち」とは,その打ち方により歌詞のもつ言葉の抑揚,曲趣や曲想,曲想の変化をも表すことのできる,一つの表現と言える理由なのです。