☆コラム~「子どもを見取るとは」について考えます~
授業を進めることに力点が置かれがちですが,見取ることが指導の基盤だということを肝に銘じなくてはなりません。なぜなら,知識の獲得は本や機器を使って一人でもできますが,考える力,豊かな人間性は人とのかかわりで育まれるからです。だからこそ,一人一人をよく知り指導に取り組むことが重要だと考えます。
子どもを見取るとは,愛情をもってその子を知ろうとすること。見取る核はその子どものよさです。よさに気づき,のばすことを指導の基として,真摯な気持ちで子どもに向き合うことから指導は始まるのです。
子どもの姿を見取るには当たり前のようですが,その表情をじっくり見ることと,子どもの話をよく聴くことです。
まず,表情を見取るとは,顔の表情だけでなく指先や足の動き,全身の雰囲気までをも感じ取ることです。足をぶらぶらさせている子どももいれば,じっと教師を見ている子どももいます。手いたずらのように常に何かを触っている子ども,常に隣の子どもの方に体ごと向けて話しかけている子どもなど,見えている姿だけでも,その子どもの心と体の状態を感じ取ることができます。
重要なのは,何を伝えたいと思っているのか,どうしてほしいと訴えているのかを理解しようとして見取ることです。私たち教師はみているようで見ていないことが多くあります。研究授業等でも,あそこでのあの子どものあの表情はと話題になっても,「気がつきませんでした」と見逃している先生もあり唖然とした経験があります。私たちは「常に子どもを見ていること」が仕事の基盤なのです。日常的に友達との関わりや授業での様子,生活面での姿など,さまざまな面から一人一人の「普段のその子」をよく見続けることが重要です。
例えば,普段顔をあげて話している子どもが,目を合わせることなく下を向いていたら,それだけで「いつもと違う」と気づきます。いつもはじっと話を聴いている子どもが足をぶらぶらさせていたら,やはり「あれっ」と思います。
それだけでなく,友達との関わり方にも違いが見えてきます。いつも進んで友達の話に呟いていたり,同調したりしているのにその時に限って無視したり,反対のことを言ったりなど「普段の様子から見えるその子」と「普段と違うその子」の両面に気づくことが子どもの見取り方なのです。
次に「よく聴く」とはどのようなことでしょうか。それは,子どもの話を最後まで聴くことです。これが難しい。一年生のこの時期では,まだ伝える力が十分でないためにとつとつと話したり,途中で話が止まってしまったりします。しかし,よく聴いていると同じ言葉でも子どもの表情やニュアンスによりその心が感じられ伝えたいことが見えてきます。もちろん,わかろうとして最後まで聴かなければ伝わってはきません。頷きながら子どもに真摯に向き合うことで,子どもは「自分の話を聴いてくれている」と感じ,考え,真剣に話すのです。長い間「自分が話すこと」を中心にしてきた教師にとって「最後まで聴く」ことは難しいことだと思います。しかし,何を伝えようとしているのか,最後まで黙って聴くことを意識して指導に取り組み「子どものよさを見取ることのできる」教師を目指しましょう。