☆コラム 「聴く力」の指導における教師の聴き方・役割を再考します。
コンピテンシーとしての「資質・能力」を身につけるためには,リテラシーとして「考える力」が必要。そのためのスキルとして「聴く力」をつけることが重要であることが提唱されてから時間が経過してきました。これまでに指導が重ねられ,子どもたちの力がついてきている実践が多くみられます。
しかし,実践において少し気になることがあります。子どもたちの話を聞く,教師の聴き方です。子どもたちの話を聞くことは勿論ですが,ただ聴いていればよいのではありません。話したいことが見つからない,話したいことがうまく伝わらない。話し合いが焦点からずれる,行き詰まる。そのときの指導や支援があるはずです。しかし,黙ってそのままであいまいなまま授業が終わりがちでした。皆さんはどのように取り組んでいますか。
「聴く力」を育てるために教師の役割は「待つと聴く」と私も指導されてきました。しかし,このことは子どものどのようなときにも「待つ・聴く」という意味ではありません。教師の聴き方・役割とはどのようなことかを考える重要性を感じました。
そこでこの「待つ」と「聴く」の内容を再考することがこの実態の改善につながると考えます。「待つ」とは,子どもが話したいことを話せるまで,待つことです。
話し手が十分に話したいことを伝えることができるようにすることです。話が少し詰まったからと先走ることなくじっと待つことです。しかし,ただ待っているのではありませんね。「伝えたいことは何かな?」と考えながら,話す言葉や表情,しぐさなど話し手の子どもを丸ごとよく見取ることです。この時間が待つということです。
「聴く」とは,子どもの言葉に耳を傾けじっとよく聴くということですが,役割は「聴きだす」意識です。「言いたいことは何?」話のきっかけをつくり,さらに大事なことや一番伝えたいことを話すことができるようにするために,話し手の言いたいこと,話したいことの世界を広げ,そして話の核となる大事なことへと深めていくことです。誘導ではありません。あくまでも,話し手である子どもの話したいことへの思いや,話そうとする意欲や態度を重視することは言うまでもありません。
この考えを意識して子どもの聴く力をつける指導に取り組むことが,教師の聴き方・役割ではないかと考えるのです。
そして,教師の聴き方・役割の具体は,例えば話が筋から逸れたら修正する。考えが対立したら双方の考えのよいところを整理しながら,話の方向性を支援します。
教師の目指すゴールに向けての誘導ではありません。「何のために」「誰のために」話しているのか,目的意識や相手意識を明確にするのです。
そして,子どもが話しているときにはその表情や間のとり方から,困り感を見取ります。表現方法がわからないのか,表現方法を決められずに迷っているのか,言葉が見つからず困っているのか,その姿のすべてを見取り,感じ取って,話し手の話したいことを存分に話すことができるよう,「聴きだす力」をつけること。これが教師の聴く力であり,子どもの話を聞くときの役割と考えるのです。教師のこの姿勢は子どもたちの「何を」「どのように聴くのか」聴くとはどのようなことなのか,「聴く力」を育てることにつながるのです。そして,「何を」「どのように」話しているのかを聴いているのですから,聴く力は同時に話す力も育てるのです。教師の「待つ」「聴く」の意味を意識して指導に取り組みましょう。