☆コラム 担任の先生は見取り上手。音楽の授業での子どもの困り感も,見取りから指導すべきことが見えてきます。
音楽授業における一人一人への指導のコツは,他の教科以上に子どもの見取りに関わっていると考えます。
なぜなら,音楽が嫌い・苦手と感じている子どもの背景は多様だからです。「あ,嫌いなんだ。」と一面的に捉えていると指導がうまくいきません。
子どもは,本当は音楽が好き。しかし,歌うことや楽器を演奏することなど,技能への自信や苦手意識をもってしまい,好きと言えないのです。子どもと対面して聴いたことからの知見です。さらに指導を受けても,自分にはできないであろうと,解決できそうもないことへの不安や疑念などのつぶやきもありました。
このように,子どもの嫌い・苦手・できない理由は,子どものもつ心情や発達段階など一人一人違いがあります。したがってその背景を多面的に見取ることがとても重要なのです。しかし現実には子どもの姿や行動に対して教師自身の思い込みや一面的に見て判断し指導していることを数多く見受けます。
特に音楽科の指導では先生方の苦手意識も影響しているとも考えます。ですから子どもの姿にも「自分と同じ」と一面的な見取りとなっているのではないでしょうか。先生方の中には音楽は特別な教科で指導に自信がもてないと考え,気になりながらもあいまいな指導で済ませてしまうこともあると聞きます。
「できるようになりたいけれどどうしたらよいかわからない,と困っている子どもは,自分の困り感をわかってもらえないと感じ,「先生に言っても駄目だな。」指導者は「あの子は指導してもできるようにはならないな。」と双方が誤った認識をもち「信頼できない関係」になってしまうのです。当然その後の指導は実りあるものにはなってはいかないのです。
しかし,教科の特性や指導の意味を理解すれば,指導は十分にできます。むしろ担任として多くの教科を指導している先生方のほうが,子どもの見取りにおいては,多面的で子ども理解が十分になると考えます。一人一人の特性や苦手意識も把握しているでしょう。どのような指導方法が適切かもわかっていることでしょう。毎日毎時間,子どもを見ている担任の先生の見取る力は大きいと考えます。見取る機会も見とれる姿も多種多様です。忘れ物一つでもその原因は多様ですね。見取る意識のもちようによって,見え方は違ってくると思いませんか。
音楽科の指導においても何が嫌いと感じているのか,苦手と感じているのかを多面的に見取る意識をもちましょう。具体的な内容について考えます。
♪歌うことが苦手な子どもの困り感
〇歌い始めの音がわからない子ども。
→初めの音が取れないことで違う歌に聴こえることがあります。伴奏の音に合わせることはありません。自由に歌わせてみましょう。ほら,ちゃんと歌えていますよ。
〇途中途中の旋律が違っていたり,リズムが違っていたりする子ども。
→歌そのものをわかっていないため,音程が曖昧になってしまい歌全体が違う 感じに聴こえてしまいます。繰り返し旋律を歌うなど丁寧に指導を重ねましょう。全員で歌うと,なんとなく歌えているように聴こえます。しかし,何人かの子どもが歌えているだけで,一人一人旋律をとらえて歌えているわけではありません。旋律を弾くなど音取りをしてそれに合わせて歌わせてみます。
〇下手だと言われたことがある子ども。
→笑われたり,先生に音が違うと指摘されたりなど,嫌な思いをしていることがあります。たとえ音程が取れてなく歌になっていなくても,声の質や歌っている表情などを褒めて,歌う楽しさを味わわせてあげましょう。
〇音程が取れなくて一本調子に聴こえる子ども
→聴くことが苦手です。旋律を取りながら先生も一緒に歌ってあげましょう。顔を見ながら楽しそうに歌いかけます。一緒に歌うとことで「歌うことは楽しい。」「できない僕の気持ちをわかってくれる。」と信頼が生まれます。また,歌えている子どもの中で向き合って歌うなど,耳を育てることも大切です。
♪楽器の演奏に対する困り感
〇どの鍵盤を打つのかがわからない子ども
→例えば木琴。低学年では箱形の木琴を使っていると思います。「どの鍵盤を打つの?」。鍵盤に階名を書いていませんか。低学年の木琴指導では,根音などの一,二音程度です。ですから使う鍵盤だけを載せて,使わない鍵盤は外しておきます。もちろん二つの音の間隔は音階通りに置きます。どの音を打つのかがわかりやすくなり,音階も視覚化され楽器への関心が高まります。
〇マレットはどう持つの? 持ち方がわからない子ども
→弾いて音を出します。軽く握って持ちます。よくある間違いは,「ステーキ」。まるでステーキを食べるように人差し指を添えて持っています。この持ち方ですと,抑えつけて打つので詰まったような音になり本来の音が出せません。打つときは上に弾くように上げることを指導します。鍵盤から30センチぐらい上げるよう支援すると,弾くという意味が伝わります。